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むだそくんについて

遊びと思想のバランスを取る困難-企画屋の絶望と喜びについて

仕事論

こんにちは。非日常クリエイターの堀元です。

僕は遊び作りのプロとしてどうにか暮らしておりまして、いつも一日に10くらいは遊びの企画を出してはメモしているのですが

堀元
うーん、この企画はイマイチだな…思想が強い

と、直感的に思って、捨てる企画がたくさんあります。

というか、最近思いつく企画のうちの4割くらいはその理由で捨てます。

 

遊びと思想のバランスを取るのは本当に難しい。今日はそんな話。

 

遊び企画は思想から生まれる

むだそくん
遊びと思想のバランス?何言ってるの?

という人のために、まずは実例をお見せしましょう。

少し前に、SNS上で話題になっていましたこちらの企画「注文をまちがえる料理店」。素晴らしい企画です。

 

注文をまちがえる料理店は、認知症の人のみが働く飲食店です。

一生懸命働いていても、注文を覚えられない場合がありますので、全然別のものが出てくる可能性がある訳です。

文句なしに素晴らしい企画で、僕はこのニュースを見た瞬間に

堀元
やられた!!超面白い!!俺が先に思いつきたかった!

と思いました。

 

何が素晴らしいのかというと、認知症というマイナスイメージのものをプラスにして、エンタメに昇華していることです。

すなわち、思想と遊びが同居しているのです。

思想:認知症を、前向きに捉えよう!

遊び:「注文をまちがえることを楽しむ」というエンタメ要素

 

そして実は、この企画に限らず、本質的にあらゆる遊び企画は思想を内包しています。

  • 「人狼」という遊びは、純粋な会話のみでゲームを進めることで、人間性をあぶり出すという思想のもとで設計されています。
  • 「ボルダリング」という遊びは、身体的感覚や経験に照らし合わせて、正解ルートを発見する喜びを味わうという思想のもとで設計されています

 

思想、すなわち「こうあるべきだ」という思いが、遊び企画には込められているのです。

むだそくん
ゲームっていっぱいあるけど、人間性ががっつり出るエグいゲームって無いよね?そういうゲームがあるべきだと思う
むだそくん
スポーツってたくさんあるけど、”自分は自分の身体をどう動かせるのか?”をひたすらじっくり考えるスポーツって無いよね。そういうスポーツがあるべきだと思う

そんな思想によって生まれるのが遊び企画です。

 

今回の、注文をまちがえる料理店にしても、発起人が

認知症を前向きにとらえて、認知症であることを楽しめるような空間があるべきだと思う

と思ったから生まれた訳です。

 

したがって、企画には思想が内包されています。

ところが、ここに一つの落とし穴があります。

 

思想が強いと企画はつまらない

思想を全面に押し出そうとしすぎると、企画はつまらなくなります。

「注文をまちがえる料理店」の思想は、認知症を前向きに捉える・認知症を楽しむということですが、これを押し出し過ぎると、

  • 認知症を前向きに捉えるための若者-認知症患者会議
  • 若者と認知症患者の食事会。〜人生の先輩から学ぼう!

みたいなものになります。何これ全然面白くない

思想が強い企画は面白くない

 

遊び企画において、思想は、内に秘めていなければならず、全力で押し出すべきではないのです。

僕はこれを、遊びと思想のバランスを取ると表現しています。

 

ちなみに僕は、エコ関連のイベントをやる人全般が苦手なのですが、それは思想が強いからです。

なんであの人たち、これでもかというくらい思想を出してくるんですかね。

これでもかというくらい思想を出してくる

 

企画屋の仕事「バランス取り」

遊びと思想のバランスを上手く取るのは、企画屋の仕事です。

僕はいつもこれについて考えてきました。そして、バランス取りを実践してきたつもりです。

 

例えば、大学生の頃からずっと、

堀元
なぜ皆のプレゼンは面白くないんだろう。プレゼンはもっと面白いものであるべきだと思うなあ

と思っていました。

しかし、これをもし、思想を強く出したままで企画にすると、

  • 面白く伝えよう!ルール無しの研究プレゼン大会!
  • スティーブ・ジョブズのプレゼンはなぜ面白いのか?ジョブズ風プレゼンを実践する会

みたいになってしまい、これまた凡庸で面白くなくなります。

 

僕が出した答えはこちらの企画。「フェチ×プレゼン」でした。

関連記事

プレゼンターが自分のフェチをプレゼンする。フェチという個人的な嗜好を、上手いプレゼンで納得させてみせろ!という趣旨にしました。

結果、目論見はまあまあ上手くいったのではないかと思っています。

笑いの量も多かったですし、純粋にプレゼンとして面白いものがたくさん集まってきました。「プレゼンを面白くする」という思想を強く打ち出さなくても、目標は達成したといえます。

 

遊び企画を仕事にするものは、このバランス取りを常に意識しなければなりません。

 

企画屋の絶望と喜び

さて、そんな訳で企画屋は

堀元
思想が強いな…ダメだこれ…

と、捨てなければならない企画がたくさんあります。企画屋の絶望です。

僕が最近捨てたので言うと、

  • 今日から家がなくなった人のためのWebマガジン「ロストホーム」
  • 食べログの人バージョン「人ログ」
  • 自殺志願者と、「誰でも良いからそばに居て欲しい」人を結びつける出会い系サイト「死ぬくらいならウチへ」

があります。この辺は全部、割とやりたい領域だったのですが、思想が強すぎて断念しました。

もうちょっと上手くパッケージ化できれば成功するような気がするんですが、現状のアイデアだと思想が強すぎて世間にウケない確信があります。

 

こんな調子で、企画屋はしばしば思想の強さのためにアイデアを捨てることになります。

堀元
これやりたい……んだけどなあ…思想強いなあ!!

企画屋の絶望です。

 

ですが、これを諦めずに一生懸命考えていくと、膨大なアイデアを捨てる中で、きらめきを持つものが生まれます。

堀元
ああっ…!こうやってまとめれば良いのか…!

この瞬間がいつもたまらない。企画屋の喜びですね。

最近で言うと、「人の誕生パーティーは面白くない。もっと面白くあるべきだ」という思想をずっといじくり回してたら、面識がない人限定誕生日会が生まれました。

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堀元
これイケるんじゃね!?

という喜びと、企画を形にしたときの

堀元
イケた!!面白かったなあ!!

という快感。

これだから企画はやめられないのです。

 

あなたの企画、思想強くないですか?

人が何かを企画するとき、思いが強すぎて、思想が強い企画が生まれてしまうことがしばしばあります。

そんな時は、自問してみて欲しいのです。

むだそくん
この企画、思想強くないかな?

と。

そして、もし思想が強いのなら(=遊び企画としてイマイチなら)、アイデアを考え直してみてください。

何度も何度も捨ててやり直していく内に、きらめきを持った一つのアイデアが生まれます。

そして、そのきらめきを世に出していくのが、企画屋としての喜びなのです。

 

 

企画は、ひと言。
企画は、ひと言。

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Ken Horimoto
堀元 見

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