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むだそくんについて

外注費を踏み倒されない方法-臓器を売らせることができない世界で。

仕事論

先日、Twitterのタイムラインを眺めていると、「仕事をしたのに料金を払ってもらえない!」と、3名の友人が同時に怒っていた。3名一緒にとかではない。それぞれ関係のない友人が、それぞれ関係のないクライアントに踏み倒されていた。

この手のトラブル、フリーランスをやっていると無限に聞こえてくる。料金不払いとフリーランスは1セットである。林家ペーの隣には林家パー子がいるし、マティーニにはオリーブがついてくる。そして、フリーランスは料金を不払いされる。そのくらい1セットだ。

んで、僕は自分が訴訟を起こされただの、事業を始めて大失敗しただのという内容をブログにしているので、こういう揉め事の相談がよく来る。

 

たいてい、揉め事の内容を聞けば聞くほど、

 

うん、まあ気持ちは分かるけど、君が甘すぎるのでは……

 

となる。「騙される方が悪い」という言葉は残酷な表現ではあるが、最低限の自衛の意識は必要なんじゃないのかと思うことが多い。あと、そもそもどちらかといえばお前の側に問題があるぞとさえ思うこともある。

 

ということで、今日は「フリーランスが料金を踏み倒されないための方法」について書いてみようと思う。

 

大方針「金は基本的に回収できない」

根本的な話だが、金というものは基本的に回収できない。ものを売ることよりも、代金を回収する方が難しいと思った方がいい。

日本は法治国家である。いかにこちらの言うことに筋が通っていようが、「とにかく金はもらっていくぞ!」と相手の財布から金を取ると、こちらが犯罪者になってしまう。

支払いを渋る相手から合法的にお金を回収するためには、裁判を通すしかない。時間も手間もかかる。回収側に非常に不利なシステムである。

更に言えば、裁判を通してすら取り立てることができないケースも多い。相手が一文無しであった場合、こちらはもうお手上げだ。裁判所が支払いを命じたところで、1円も持ってない人間は1円も支払えない。「臓器を売って返せ」と言うワケにはいかないのだ。それができれば確実な取り立てなんだけどね…

 

そういうわけで、「ちゃんと仕事をしていればちゃんとお金がもらえる」というのはあまりにも牧歌的で、あまりにも人間を信じすぎている。残念ながら現実はそうではない。

労働者しかやったことがない人がフリーランスになると、そのあたりのギャップに戸惑うらしい。確かに会社員は基本的に働いたら給料が出る。残業代出る出ない問題くらいはあっても、「一ヶ月働いたのに給料が全く出なかった」ということはまずない。

その感覚のまま商売の世界に飛び込んでくると大変である。「僕は働いたのになぜ、お金が振り込まれないのだ???」と混乱することになる。OK落ち着こう。金はそうそう回収できない。まずはそこを認識しよう。

 

では以下、踏み倒されないためにどうすればいいのかを具体的に述べていく。

 

たった一つの冴えたやり方「前払い」

結論から言うと、踏み倒されない方法はたった一つだ。「前払い」である。

前述の通り、金は基本的に回収できない。しかし、既にもらった金は消滅しない。実にシンプルな話だ。

先ほど、「こちらの言うことに筋が通っていても相手の財布から金は抜けない」という例えを使った。これは逆に言うと、「先に金を回収してしまえば、相手もこちらの財布から金は取り返せない」ということを意味する。

前払いにしていれば、裁判をしなければいけない立場がこちらではなく相手になる。すごいシステムだ。前払い、最強じゃないか。

 

ということで、全ての取引を前払いにしよう。これだけで全ての問題が解決だ。

以上。今日の記事終わり。

 

 

まあ無理ですよね。分かります。

と、そうやって締めくくることができればどれほど楽だろうか。人生はままならないし、商売はもっとままならないものだ。ああ、来世はもっと楽な世界に生まれたい。

全取り引きを前払いにするのは不可能、というか相手が法人の場合は9割方無理だろう。相手にも経理の都合があり、締め日という概念がある。ほとんどが請求書による後払いになるはずだ。

そういうわけで、フリーランスになってからというもの「前払いはできない」と決めきっている人が多いらしい。皆ありとあらゆる相手に、当然のように後払いで料金を請求しようとする。

 

だが落ち着いて考えて欲しい。「なるべく前払いにしよう」という心構えを持っておくことはできる。

例えば、個人相手の仕事だ。経理処理が関係ない個人相手の仕事は全部前払いを切り出そう。これだけで不払いトラブルは激減する。体感的には不払いトラブルの半分以上は個人相手の仕事のような気がする。

個人相手の仕事なんて10万円以下くらいの少額のものが多いだろう。全部前払いにしてもらおう。

「言い出すのが申し訳ない」「まだ何もしてないのにまず金を出させるなんて、相手の気分を害さないだろうか」という人が多いらしい。大丈夫、前払い提案に対して気分を害するヤツなんてろくなヤツじゃない。

あなたに仕事を依頼してくる際に、「ちゃんと対価を払うぞ!」という気持ちがある人は前払いだろうが後払いだろうが気にしないはずだ。お金を出すタイミングがちょっと変わるだけだから。

 

逆に、前払い提案に難色を示すヤツは、「出てきたものを見てあわよくば値切ろう」と考えているヤツだ。こいつのために仕事をするのは全然良いことがない。前払いを嫌がられたらいっそ断ってしまおう。

また、「資金繰りが極端に苦しいヤツ」ということもありうる。これも断ってしまおう。

10万以下くらいの支払いを渋るくらい資金繰りが苦しいヤツは、結構な確率でトンズラしてしまうものだから。

 

友人知人こそ前払いの徹底を

トラブルが特に多いのが、友人知人との取引である。こういう事例は枚挙に暇がない。

「うちの店のWebサイト作ってよ」

「はい。こういう感じで15万になります」

「おっけー。よろしく」

「できました」

「うーん、気に入らないな」

「何が気に入らないんですか?」

「うーん、よく分からないけど気に入らない」

「言語化してください」

「よく考えてみたらそもそもこれ要らなかったわ。やっぱなしね。料金も払わない」

「てめえ殺すぞ」

 

こういうケース、ホントに多い。厄介なのは、クライアントも悪気があってやってるワケではないのである。

友人がWebサイト作ってるぞ、そういえばうちの店も欲しいな、ちょっとお願いしようかな、そういうノリでうっかり発注してしまう。友人なればこそ、相談と発注の境界線が曖昧なのだ

クライアントの一連の行動には確かに問題があるが、受注してしまった方も悪い。

では、どうすればよかったのか。

この問題を一撃で解決するのが「前払い」というハンマーである。人間は、金を出す瞬間にはちゃんと考える。出した金は取り返せないということを、本能レベルでなんとなく分かっているからだ。

 

「しっかりした契約書を作ってきちんとハンコ押させる」ってのも良いんだけどね…。零細事業者だといちいちそれが面倒な場合が多いので…。10万やそこらの小さな案件で一生懸命契約書作ってらんねえよ。

というワケで、友人知人にこそしっかり前払いをさせよう。前払いは正義。手間もかからず、揉め事にもなりにくい。

前払いを切り出した時点で「オレが信用できないのか!」って怒るヤツはきっぱり切り捨てよう。そうやって怒った時点でこいつは信用できない

僕は昔、金を貸す時に「借用書を書いてくれ」と提示したら「必ず返すって言ってるだろ!オレが信用できないのか!」と怒られたことがある。結局あれから3年経っても金は返ってきていない。「オレが信用できないのか!」は信用できないヤツが言うセリフである

 

99%のまともな人は前払いを頼んでも、怒ったりしない。友情にヒビが入るんじゃないか…と思って前払いをためらうのは愚かだ。前払いの方が友情にヒビは入らない。

前述の「いきなり発注取り消し」をやられて「でも料金は払ってもらうぞ!」「嫌だ!払わない!」という泥沼の戦いをすると、友情なんて跡形もなく吹き飛んでしまう

金は堂々と、先に請求しよう。その方が友情にヒビも入らないし、トラブルも減る。

 

法人を相手にするときは、期待値を計算する

さて、個人相手の時は”前払いを徹底”だとお伝えした。これでトラブルの半分はなくなると思う。

続いて、どうしても前払いができない法人を相手にする時の話。

 

これはもう方法は一つで、期待値を計算するということになる。

 

支払いの確率を考えて、仕事を受けるかどうか決めるのである。練度の高い商人なら当然やっていることだ。

どういうことか、一つたとえ話をしよう。

あなたは印刷業を営んでいます。チラシを千枚いくらで印刷する商売です。
ここに、一人の客がやってきました。「誰もが知ってる大企業」の名刺を持っています。本物のようでした。10万枚のチラシを刷って欲しいそうです。料金は二ヶ月後の月末に払われるそうです。
あなたは喜んで引き受けます「12万円でやりましょう」。

続いて、次の客がやってきました。「開業したばかり、一人だけの会社」の社長です。
同じように、10万枚のチラシを刷って欲しいそうです。料金も同様、二ヶ月後の月末に払われるそうです。
あなたは引き受けます。さて、【いくらの値段で?】。頭に浮かべてください。

……

 

ここで「12万円」と答えるのは、お人好しだ。”定価”に慣れきっている消費者の発想。商売人としては愚かとしか言いようがない。

この場合、12万円よりも高く見積もらないといけない。なんなら「25万円」と言ってもいいと思うし、実際に言う人も多いだろう。

なぜか、二ヶ月後の月末にその会社は潰れているかもしれないからだ。繰り返すが、金は基本的に回収できない

 

つまり、期待値をベースに値段を設定するということだ。回収できる確率が50%なら、値段を二倍にしないといけない。

倒産・払い渋りなどのトラブルがどの程度起こるのか?それを見積もって値段設定、サービス提供をするべきだ。

これはどの世界でも当たり前に行われていることだ。

金融が分かりやすいだろう。金貸しは、優良顧客には安い金利で貸すが、微妙なヤツには高い金利で貸す。これはまさに期待値を考えてのことだ。返ってくる確率が低いなら、その分利ざやが大きくないとやってられない。

 

また、ある程度以上の確率で「取りっぱぐれそうだ」と感じたら、値段設定を変えるのではなくすっぱり断るのがいい。「御社は潰れそうなので引き受けません」と言ってしまうと角が立つから、「今は手がいっぱいで引き受けられない」とでも言っておこう。

 

ダメそうな取引先の見分け方

そういうわけで、「取りっぱぐれリスク」を考えて値段設定したり断ったりするべきだ、という話をしてきた。

ではここから、「取りっぱぐれリスク」をどう見積もるかという話をしていこう。

 

儲かっているかどうか

はい。露骨すぎてなんとも言えない気持ちになるね。でも一番大事なパラメータはこれだよ。

すごく世知辛い話なのだけれど、金持ちは金を払ってくれやすいし、貧乏人は金を払ってくれないことが多い

根っからの悪人などこの世にほとんどいないのだ。仕事の発注者は「金があるなら払いたい」と思っている。

だから、相手が儲かっているかというのは非常に重要なポイントになる。火の車のヤツは数万円の外注費さえ渋る。こないだ僕のところに持ち込まれた相談も一つはそのケースだった。一流の起業家みたいな顔してブイブイ言わせているヤツが実は大赤字に苦しんでいて、2万円の外注費を払ってくれないという話だ。僕は聞いて笑ってしまった。「こんなドヤ顔の人が2万円払ってくれないのか」と。

 

これまでの支払い、やり取り

前のポイントとも被ってくるのだが、「これまでの支払い」はとても大事なデータだ。

一般に、「5万、10万という額の支払いが完璧に行われてきた」という積み重ねは非常に大きい。

遅滞なく、正しい金額を処理し続けられる会社や個人は素晴らしい。当たり前に見えるがこれは結構難しいことだ。何ヶ月もそういう関係を保てていれば、相手はきちんと支払いをしてくれるのだと考えていいだろう。

 

また、お金の支払い以外にも、「細かい連絡のやり取り」なども貴重なデータだ。請求書をメールで送ったのに全然反応がないとか、要点がまとまってない困った連絡をしてくるとか、そんなことも大いに減点材料だろう。

あと、経験則だが「レスポンスが遅い」のは激烈な減点材料である。すぐ返信できる内容を一週間待たせるヤツは、お金も払ってくれないことが多い。返信に一週間かかるということは、振込には半年かかる、そういう世界観だね。

 

そういった減点材料が全然ないクライアントは優良クライアントである。積極的に労力を割いていい。大事にしよう。そこが相手なら未払いトラブルもまずないだろう。

このような「こいつならまあ大丈夫だ。ありがたい取引先だ」という感覚を商売人の言葉に置き換えたものが「付き合いのある業者」という概念である。

付き合いのある業者は大事にした方がいいし、サービス労働も低めの見積もりもしてあげていいだろう。

 

担当者のエラさ

これは大きい会社相手の話なのだが、交渉相手に決済権がないという場合は一段階レベルが上がる。見極めが難しいのだ。

担当者はとても仕事ができるし話が分かる、しかし上司は通してくれない。一旦OKが出たから作っちゃったのに、土壇場でダメになった。ということが起こる。

そんなワケで、担当者がエラくない(決済権がない)場合は自動的に回収の期待値がちょっと下がる。労力をかけたのに回収できないケースが増えるからだ。

しかし悪いことばかりではない。大きい会社ということは資力がしっかりしてるから、大金の請求を出しても後腐れなく払ってくれる。調整コストや帳消しリスクをしっかり計算して、大きめの金額を請求しよう。

 

以上、取引先を見分けるポイントを詳述した。

このポイントを使って、「取りっぱぐれそうだ」と思ったら断る。取りっぱぐれリスクがあるなら、期待値を値段に反映させる。そういった処理をしてほしい。

 

これで、本記事で言いたいことは大体終わりなのだが、最後に例外的な話も紹介する。

 

最強の技術:取りっぱぐれるものと思って行動する

散々「取りっぱぐれないために」という話をしてきたのだが、僕は結構「取りっぱぐれそうな仕事」もたくさんやっている。

そういうときの気持ちはどうなのかというと、【まあ取りっぱぐれてもいいか】である。

多大な時間を使ったり、大きなストレスがかかったりする大きな仕事は取りっぱぐれると困るのだが、そうでもない仕事も結構ある。

イベントにちょっと出たり、ノウハウをちょっと教えたりといったものだ。

そういう小さい仕事は「取りっぱぐれてもいいか」と思いながらやる。すると、ちゃんと支払われた時に「おお、ちゃんと支払われた!」と感動すらある。

 

そして、こういった小さい仕事の支払いを迅速・確実にしてくれる人は結構信用できる。逆に、支払いを渋ったり遅かったりする人はダメだ。小さい仕事の支払いが遅い人は、大きい仕事の支払いを踏み倒す傾向にある。

困った人をあぶり出すための試金石とでも思って、「取りっぱぐれてもいいか」という小さい仕事をやるのも悪くはないのかもしれない。

 

金は借りている方が強く、社会は厳しい

以上、外注費を踏み倒されないための方法論を紹介した。

社会の荒波は厳しい。ちっぽけな自営業者は、荒波に揉まれながらどうにか進んでいく一艘の小舟だ。

それでも、ガムシャラに波と闘っている内に、だんだん航海にも慣れてくる。

嵐の夜をどうにか耐えきった後、穏やかな海面から見る朝日はホントウにキレイなものです。転覆しないでお互いどうにかやっていきましょう。僕も沈まないように頑張ります。

 

 

おまけ:「カバチタレ」がオススメ

フリーランスとしてやっていくならなるべく法律知識を頭に入れておきたいもの。

勉強のためにマジメな本を読んでもいいが、僕はマンガ「カバチタレ」をオススメしたい。

 

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料金未払い問題はもちろん、離婚の慰謝料問題・会社の倒産整理問題・不動産トラブルなど、多岐にわたる事例を扱っていてとても勉強になる。

人間ドラマもよくできているので、繰り返し読んでしまう。楽しみつつ法律知識を身に着けたい人はぜひどうぞ。

author
Ken Horimoto
堀元 見

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