こんにちは。月額会員制村作りサービスをやっている関係上、薪ストーブの前でよくブログを書きます。堀元です。
いやあ、それにしても騒がれましたね。昨日のはあちゅう氏の告発記事。
久しぶりに「インターネットおもろ!」ってなる熱い記事と騒動でした。
時事ネタにあんまり首をツッコまない僕なのですが、あまりに面白かったので今日は書きます。
ぶっちゃけ、これだけ多くの人を熱くさせる告発劇は、社会正義というよりもむしろエンターテイメントだと思いました。
僕の持論なのですが、どんなに素晴らしい正義も、エンタメ性がなければ拡散されません。
だからメディアはどんなにお固いニュースだろうが、美女に群がり、死にかけの子どもの写真を撮りたがる。”美女”という分かりやすい画面映えや、”死にゆく子ども”という分かりやすい悲劇を求める訳です。
で、はあちゅう氏の今回の告発がエンタメとしていかに優れているかという話をします。
自身も実名、相手も実名
まずこれね。この時点で楽しい。最高のエンタメですよね。
人は、知人と知人がケンカしてるのを見るのが好きです。安全圏から、という条件付きですが。
知人と知らないやつがケンカしてるのはそれほど面白くないし、知らないやつと知らないやつがケンカしてるのはもう全然面白くありません。
物語のエンタメ性は”リアリティ”に宿ります。
社内ゴシップの何が楽しいって、リアルに想像できるからです。
という話の盛り上がりは、◯◯課長のことも□□ちゃんのこともある程度認識しているからです。だからこそ「え〜!意外!」とか「あの二人怪しいと思ってた!」とかそういう話ができるわけです。
そんな訳で、今回の騒動の楽しさは、言わずと知れた知名度のはあちゅう氏が、クリエイター岸勇希氏の名前を思いっきり出して告発したことにあります。
正直、この岸勇希氏の存在はニュースになって始めて知ったのですが、ググると結構いろんな情報が出てきて楽しいです。
(Wikipedia「岸勇希」より)
調べれば調べるほど、スタークリエイターとしての彼の地位が伝わってきますし、人物の概要がありありと見てとれます。
という素晴らしいワクワク感があります。
機が熟すのを待ってからの復讐劇
はあちゅう氏の胸中は謎ですが、穿った見方をすると、機が熟すのを待ってからの復讐劇にも見えます。
借金玉氏の一連のツイートが、この辺の想像を掻き立てますね。
いやー、おそらくこれ復讐計画が形になったの過労自殺事件の辺りですよね。あれで電通側に潰されるリスクがかなり小さくなった。しかも、報復に義が生まれた。しかし、そこで飛び出したら電通を相手取ることになる。だから、独立するまで待ったわけだ。
— 借金玉 (@syakkin_dama) December 17, 2017
ヘタなことやったら「良くて相打ち」だったはず。耐えて機を待ち続けた甲斐がありましたね。
— 借金玉 (@syakkin_dama) December 17, 2017
株式会社刻キタル、まさにでしたね。復讐の刻であり破滅の刻でしたが。
— 借金玉 (@syakkin_dama) December 17, 2017
これ、は氏もぶっぱなす前に徹底的に下準備してるだろうし、当然だけど山ほど貯めて来たカルマも連鎖的に発火するだろうし、インターネットが燃え盛ってるヤバさより、業界内で勝負ついてるっぽいのがやばそう。
— 借金玉 (@syakkin_dama) December 17, 2017
はあちゅう氏は、「#MeToo」というタグでセクハラ被害を発信する流れに勇気をもらったという旨のことを言っていますが、穿った見方をすれば、この動きにかこつけてぶっ放しやすいタイミングだったのは間違いありません。
しかも、岸氏は2017年に独立したばかり、借金玉氏の指摘の通り、電通を敵に回さないためにベストのタイミングとも言えます。
これまでのは氏のモチベーションの根源に報復があったならかなり好感が持てる。
— 借金玉 (@syakkin_dama) December 17, 2017
これに関してはサスガに穿った見方過ぎるかなとも思いますが、はあちゅう氏はこの復讐劇を成し遂げるために、独立して発信力を磨き続けた可能性すらあります。
この辺は神と本人のみぞ知る、って話ですけどね。こちらも外野から想像するワクワク感がたまらない。
弱いものが強いものを倒す”下克上”の構図
また、物語としても非常に優れているんですよね。「起承転結」が極めてはっきりした下克上の構図です。
人は皆、下克上が好きです。強いものが弱いものを蹂躙する地獄を、一撃で破壊する下克上。
そんな、古典的ながらも普遍的な下克上の物語性が、存分に発揮されています。
以下、BUZZFEEDの元記事から引用。
はあちゅうさんは2009年に慶應大学を卒業。同年、電通に入社した。中部支社に配属されたはあちゅうさんは、東京本社への異動を希望していた。
岸氏は当時、すでに本を出版し、業界で著名なクリエイター。新入社員だったはあちゅうさんにとっては、憧れる存在だった。「気にいってもらえたら、早く希望の場所にいけるかもしれないという思いがありました」
導入から非常に分かりやすい構図。起承転結の「起」にあたります。
新卒のか弱い女の子VS既に地位を持ったオッサンです。
「『俺に気に入られる絶好のチャンスなのに体も使えないわけ? その程度の覚悟でうちの会社入ったの? お前にそれだけの特技あるの? お前の特技が何か言ってみろ』と性的な関係を要求されました。『お前みたいな顔も体もタイプじゃない。胸がない、色気がない。俺のつきあってきた女に比べると、お前の顔面は著しく劣っているが、俺に気に入れられているだけで幸運だと思え』と」
「また当時の彼女とのセックスについて『あいつは下手だからもっとうまい女を紹介しろ。底辺の人間の知り合いは底辺だな。お前もセックス下手なんだろ。彼氏がかわいそうだ』などと言われました」
これでもかというくらい、相手の憎いところを描写。起承転結の「承」ですね。
- セックスの強要
- 女性としての魅力への侮辱
- 地位を笠に着た一方的な攻撃
- 友人への侮辱
- 恋人への侮辱
- クリエイターとしての能力への侮辱
- 友人を生贄として差し出す要求
などなど、憎しみのオンパレードです。ここ、何回読んでも面白い。
衝撃の事実を凄まじい速度で提示し、読者は一息つく間もなく圧倒的に引き込まれます。
そして、一緒に憎しみを抱えるような構成になっています。
続いて、ここが見事!Messengerからのスクショです。
起承転結の「転」ですね。
また、こちらは先程言及した”リアリティ”の観点からも素晴らしい演出です。
実際はあちゅう氏に届いたメッセージをスクショで見せることによって、まさに現実のこととして圧倒的なリアリティを持って読者に提示されるのです。
しかもですよ。文面自体は”謝罪”なのに、読者からの反感を何ら軽減しないどころか、むしろ反感を増幅させるという演出です。
演出の核は、この二文です。
その後、岸氏から、はあちゅうさんへの連絡はなかった。しかし、BuzzFeed Newsが関係者への取材を始めた頃、はあちゅうさんに対し、以下のような謝罪文が急にFacebookメッセンジャーで届いている。
「関係者への取材を始めた頃、はあちゅうさんに対し、以下のような謝罪文が急にFacebookメッセンジャーで届いている」という言い回しが、明言しないものの、
この企画の存在を感じ取った岸氏が、保身のために謝罪を送った
という解釈をありありと語っています。
そして最後に、岸氏に対する事実確認の回答や、他の電通社員への取材結果、同じ境遇にいる女性へのはあちゅう氏からのメッセージなどを掲載して記事が締めくくられます。起承転結の「結」ですね。
社会課題としてのハラスメントの問題提起や、はあちゅう氏の温かいメッセージで、読後感も爽やか。
また、電通社員へのヒアリング結果から、岸氏の今後の悲惨な未来もありありと想像でき、「復讐劇ここに相成った」という感覚も覚えます。
いやあ、本当によくできたストーリーです。これは誰もが手放しに賞賛・拡散してしまう。
微に入り細に入り素晴らしい記事と告発で、インターネット内の話題を総なめするのも当然という感じです。
まとめ「正義にもエンタメ性が必要だ」
無論、パワハラやセクハラは許されるべきではないのですが、それを普通に訴え続けても世間には響きません。
今回の告発が凄まじい反響を呼んだのは、エンターテイメントとして実に完成されたものだったからです。
この爆発的な反響で、きっと岸氏は終わりでしょうし、社会に与えたインパクトも計り知れないでしょう。
セクハラ・パワハラを告発しやすい機運も高まってきたと思います。
夜軽く食べながら打ち合わせしましょうと仕事関係だった男性に言われて、元々そういう噂があるような人だったからかなり警戒して向こうが持ってきた飲み物を一口ぺろっとしかしなかったのに、ガクンと脳に来て、これはクスリ盛られたなと確信して適当な理由つけて即帰ったことある。実話。続#metoo
— 椎木里佳 (@rikashiikiamf) December 17, 2017
著名人がドンドン続いてて楽しいですね。
僕の持論「どんなに素晴らしい正義も、エンタメ性がなければ拡散されない」、逆に言えば、「エンタメ性のある正義こそが、拡散されてインパクトを持つ」ということの好例ではないかと思いました。
皆さんが寄り添うどんな正義も、その武器としての”エンタメ性”が必要です。
はあちゅう氏のエンターテイナーっぷりを見習って、是非エンタメ性を高めて行きましょう。