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むだそくんについて

これは現代アート?ゴミ?プロ清掃員芸人が脱衣分別クイズに挑戦したら迷宮に突入した

新しい遊び

 

「う~ん、どっちかなぁ……」

裸のオジサンが、ウエディングドレスを注視している

これは新しい変態の形ではない。一人の男が戦いを続けた結果、たどり着いた場所なのだ。

 

 

始まりは「ごみ分別クソ食らえ人間」

よく晴れた秋の日。僕の家に、一人の芸人が訪れた。

彼。マシンガンズ滝沢さんである。

僕は小学生の頃、「エンタの神様」などのネタ番組に彼らが出ているのをよく見ていた。腹が立つものに対して2人で怒りまくるといった芸風で人気を博していた。

あれから、10年以上の時が流れた。彼は今、全く違う形で人気を博している。

 

それは、「ゴミ清掃員」である。芸人とゴミ清掃員を兼業する彼は、その独自の経験を語ることに定評がある。

ゴミ清掃員としての日常を書いたコミックエッセイ「ゴミ清掃員の日常」はTwitterでも話題となり、版を重ねている真っ最中だ。

 

そんな彼が、なぜ僕の家を訪れているのか?

話は数ヶ月前に遡る。僕のTwitterアカウントに、1件のリプライが来た。

 

 

面識も全くないのに突然、『ごみ分別芸人VSごみ分別クソ食らえ人間』という謎のライブの相談であった。

ごみ分別クソ食らえ人間」という文字列、初めて見た。「ごみ分別芸人」という文字列も相当よく分からないのに、その対義語を生み出さないで欲しい

 

一生見ずに終えるはずだった文字列を見た驚きに面食らい、勢いで快諾してしまった。

 

しかし、このイベントは白紙に戻る。ステークホルダーである出版社にダメだと言われたらしい。

そりゃそうだろ。「ごみ分別クソくらえ人間」で出版社がOK出すワケがない。

 

それでも彼は僕とコラボがしたかったらしい。代わりに「変な企画記事を書いて著書の宣伝をして欲しい」と言われた。OK、僕の得意分野だ。彼の「分別」能力を活かした企画をやろう。

 

ゴミっぽい現代アート?それとも現代アートっぽいゴミ?

滝沢さん(左)と、企画の説明をする僕(右)

 

広告記事の依頼を受けてから2ヶ月、準備が整った僕は自宅に滝沢さんを呼び出した。

何も聞かずにノコノコやってきた彼に、企画の説明を始める。

 

今回は、滝沢さんの得意な「分別クイズ」をやって頂きます。

 

これを聞くと、滝沢さんは意外そうな顔をした。

いやいや…

 

オレそんなの全問正解しちゃうよ?ゴミ分別についての本だって書いてるプロなんだから

 

大丈夫です。今回はゴミと現代アートを分別するクイズなので

 

ゴミと現代アート…???

 

一見するとゴミっぽい現代アートってあるじゃないですか。あれと、なんとなく現代アートっぽく見えるゴミを分別するクイズです。

 

なんとなく誰かに怒られそうな企画だ…。ゴミの方はともかく、ゴミっぽい現代アートってそんなに用意できたの?

 

はい。今回はとある現代アーティスト全面協力のもと、作品が集まりました。

 

その人、よく怒らずに協力してくれたね。「オレの作品をそんなふざけたクイズに使うな!」って言われそうだけど

 

協力者探し、めちゃくちゃ大変でしたよ。「無理に決まってんだろ死ね」的なことを10人くらいに言われました

 

それで諦めなかったのがすごい

 

諦めなければ夢は叶うんですね。

 

君の夢、現代アートとゴミの分別クイズで本当にいいの???

 

Tips:諦めなければ夢は叶う

 

 

 

しかも、協力者の現代アーティストが、なんと今日ここに来てくれています

 

おっ、すごいね。ご本人がわざわざ!

 

 

こちらの方です!どうぞ!!

 

 

 

 

 

 

関わっちゃいけないタイプの人じゃん

 

失礼ですよ。わざわざ来てくれてるのに

 

アーティストってこういうことじゃないでしょ。こいつ、仕込みでしょ?

 

仕込みじゃないです。マジで僕は何も指示してないのにこの格好で来ました。

 

 

マジで仕込みじゃないので、僕も普通に引いた

 

 

現れた仮面の男に、場がざわつく。僕は「記事のコンセプトが散らかるから余計なことしないで欲しいなぁ」と思っていた。

とにかく、とりあえず着席して話を前に進めようとするが、やはり仮面についての質問が飛び出す。

 

すごいな。なんで仮面してるんですか?

 

 

……

 

………

 

………

 

…………

 

……どうやら、喋らないようですね。

 

間がすごい人なのかなと思って待っちゃった。時間ムダにした。

 

Tips:現代アーティストが喋るのを待つと、時間をムダにする

 

彼は喋らないみたいなので、僕が代わりに紹介しておきますね。

 

名前:冨田悠暉(Twitter:@toidora)

名古屋大学在学中。名古屋大学作曲同好会主宰。

高校時代から作曲を始め、作曲による受賞歴多数。

大学入学後に現代アートの制作を始め、インターネットを中心に精力的に現代アート作品を発信している。

 

 

あっ、この仮面、目のところに穴が空いてる

 

せっかく紹介してるんですから、話を聞いてくださいよ

 

目のところには穴が空いてるらしい

 

 

 

 

とにかく、今日は彼の作った現代アートを題材にクイズを作りました。不正解の場合は罰ゲームがあります

 

まあ、趣旨は分かったよ。ゴミかアート作品かを当てればいいんだろ?余裕だよ

 

自信満々の滝沢さん

 

オレも40年以上生きてきて、芸術にはたくさん触れてきたからね。しかも、芸人として20年以上勝負している。芸人の世界だって、感性で勝負する世界だよ?

 

そう語る彼の声に、揺らぎはなかった。自信満々だ。

確かに、彼の言う通りかもしれない。彼は幾度となくステージに立ち、幾千人の客を笑わせてきた。書き上げた本は版を重ね、多くの人に愛されている。

彼ならばいとも容易に、全問正解してしまうかもしれない。もしかしたら、この企画は企画倒れに終わってしまうだろうか。

 

そんな不安がよぎりながら、クイズは始まる。

全11問のクイズだ。あなたもぜひ一緒に、「これは現代アートか?それともゴミか?」を考えながら読んで欲しい。あなたは、滝沢さんより多く正解できるだろうか。

 

電光石火の1問目

 

では早速1問目ですが、写真作品になります。こちらの写真をご覧ください

 

 

ゴミ。
すごい。0.2秒で即答した。
いや、こんなもんゴミ以外ありえないでしょ。街角でよく見るヤツじゃん。
疑う余地もなくゴミであると?
ゴミだよゴミ。

 

1問目、「これはゴミである」と即答。

 

それがファイナルアンサーということでよろしいですか?
もちろんです。これは、現代アートではありません!

 

 

これは、現代アートではありません!

 

回答を叫ぶ彼のハスキーボイスが、閑静な住宅街にこだまする。ステージの上で鍛え上げられた声量。

一切悩まない、さすがの思い切りである。彼の自信は本物だ。セコセコと裏を読んだり、悩んだりしない。

芸人を20年続ける内に磨き上げられた彼の感性は、きっと最高潮に達している。アートかゴミを見分けるなんて、彼にとっては簡単すぎる。

 

 

では正解を発表しますね。こちらは……

 

 

現代アートです

 

えっっっ!!!!!!!

 

えっ…???

 

滝沢さんは信じられない表情を浮かべている。

圧倒的に自信満々だった人が、すごい勢いで間違えてしまう。昭和のコントみたいな流れがキレイすぎて、僕は進行役にあるまじき爆笑をしてしまった。今どき見ないタイプのコテコテの笑いだ。

 

進行役にあるまじき爆笑

 

 

さすが滝沢さん、フリがお上手ですね。古いタイプのお笑い、僕は好きです

 

いやいや!!フリとかじゃなくて、マジでそう思ったから!これは明らかにゴミでしょ!?

 

ゴミじゃないです。彼のれっきとしたアート作品です

 

ホントに……??この企画のために仕込んだヤツじゃないの…?いくらなんでもゴミっぽすぎるでしょ

 

違います。彼が本当に過去に作っていた作品です。

 

でもさ、これのどこに芸術性があるの?

 

全然納得しない。

 

一応その辺を彼が解説してくれる予定だったんですが……解説してもらえますか?

 

恐る恐る話を振ってみると、仮面の男は少しだけこちらを向いた。

 

 

……

 

シュルッ…

 

シュルル……

 

スッ、カチャッ

 

「これはですね、元々……」

 

喋った!!!!!!

 

この人、喋れるんだ

 

仮面をつけていると喋れないシステムなの?

 

これはですね、元々僕が書いた小説でして……

 

あ、仮面のシステムについては教えてくれないんだ

 

Tips:仮面のシステムは聞いても教えてくれない

 

 

このグシャグシャの紙は元々、僕が書いた小説です。誰かに読んで欲しいと思って大学のベンチに置き、最後に「感想を送ってください」というメッセージと共に、メールアドレスを書いておきました。

 

しかし、実際には誰も感想を送ってくれなかった。それどころか、グシャグシャにされて捨てられていました。

 

ここに一つの気づきがあります。小説というものは、「読む人」が存在して初めて「読まれるもの」としての価値が生まれます。「読まれなかった小説」には価値がありません

 

うん。だからゴミじゃない?

 

ゴミじゃないです。このグシャグシャの小説は、「ものの価値は、作者と鑑賞者との関係に宿る」ことを意味しているわけです。元々は読まれることを希求していた小説は、読まれなかったことによってアート作品になったのです。

 

それっぽい説明だ。よく分かんないけど説得力がある。

 

うーん……でもさあ……

 

食い下がる43歳男性

 

みんなはこれのこと、ゴミだと思ってるよね?だからクシャクシャに捨てられてるわけで。

 

そうですね

 

ってことはさ、多数決の原理ではこれはゴミなんじゃないの?

 

滝沢さん、よく覚えておいて欲しいんですが……

 

アートは、多数決から最も遠いところにあるんです

 

 

名言だ

 

そんな名言が出たらもう負けを認めるしかない

 

今日の名言:アートは多数決から最も遠いところにある。

 

分別されるネクタイ

滝沢さん、間違いだったので罰ゲームがあります

 

ああ、なんかそんなこと言ってたね。何?

 

間違う度に、着ている服が一枚ずつゴミとして分別されます

 

なんで????

 

アートかゴミかも見分けられないようなゴミ感性のゴミ芸人の服は、ゴミですから

 

口が悪すぎる。

 

 

まずこのネクタイを捨てましょう

 

お気に入りのネクタイなのに…。

 

仕方ないです。今日は「現代アート脱衣分別クイズ」なので。

 

要素詰め込みすぎじゃない???そんな謎の文字列生み出さないでよ

 

「ゴミ分別クソ食らえ人間」という謎の文字列を生み出した人に言われたくないです

 

復活できないように切断して…

 

ゴミ袋に入れる。

 

ちなみに、このネクタイは何ゴミで捨てたらいいですか?

 

可燃ゴミだろうね。地域によっては古布の資源回収を行っているので、そっちに出せるなら出した方がいい。

 

そうですか。

 

興味なさそうだね。

 

Tips:この世には、ゴミ分別クソ食らえ人間もいる

 

 

それでも彼は、即答を続ける

続いて、2問目を出題した。

次の問題は、こちらです。

 

ゴミです。

 

0.2秒で答えるのやめましょうよ。それでさっき失敗してるんだから

 

やはり即答される2問目。

 

いや、これゴミだよ。しかも粗大ゴミ

 

さっきもそれで間違ってたでしょ。もっとよく考えましょうよ。ぶっちゃけ、色々喋ってくれないと記事の尺が足りなくなるんですよ

 

 

じゃあ何か喋ろうか。これはね、一応切ってあるみたいだけど、まだまだ大きくて収集できないですね。「一辺が概ね30cm以上のもの」を粗大ゴミと呼ぶんだけど、これは事前に連絡してもらわないと回収できないので…

 

捨て方のディティールはどうでもいいんですよ

 

 

 

まあとにかくオレの答えは変わんないね。これは現代アートではありません!

 

 

2問目の答えは……

 

ゴミです。

 

 

いよっし!!!

 

2問目は無事正解ですね。これはウチにあった要らない布団です

 

まあねえ……さすがにこれはゴミだと分かるよ。

 

めちゃくちゃ嬉しそう

 

布団なんていくつも回収してきたからね。ゴミを見て来た年季が違うよ。なんていうかこう…ゴミは自分から語りかけてくるんだよね。”ゴミです”ってさ。

 

当てたらめちゃくちゃ喋りますね。

 

大丈夫。一問当てたら自信が湧いてきたよ!次行こう!!

 

じゃあ次に行きますね。

 

「これです。」

 

3問目は今までよりゴチャゴチャした印象だが、彼の反応は……。

 

酒のビンと缶と……Tシャツかな?それが水びたしで洗面器に入ってる……?

 

彼は今日初めて身を乗り出して、写真を見た。僕は「お、やっとマジメに考える気が出たか」と思ったのだが……

 

 

まあ、ゴミだね

 

だから、もうちょい悩んでくださいよ

 

しかも、分別がめんどくさいタイプのゴミだ。缶とビンを分別して、水気を切って、Tシャツはよく絞って可燃ごみに出さないと。みんな水気を取るのを忘れがちなんだけど、生ゴミなんかでもちゃんと水分を絞ってから出すのがコツなんだよね。

 

この人、すぐ自分の得意分野に持ち込むタイプの人だ。全然アートについて考える気ないな。

 

ほら、正解発表して!オレの答えは「ゴミ」だから!!

 

え~、正解は……

 

 

ゴミです。

 

っしゃあ!!!

 

どうよオレの能力???最初こそ躓いたけど、あとはもう全問正解で行けるんじゃない???やっぱ簡単だよ、ゴミとアートを見分けるのなんて

 

この人、今のところ「ゴミです」しか言ってないのになぜそんな自信を持てるんだ…!?

 

 

 

初めての迷い。そして、人生の悲しみに思いを馳せる

続いての4問目は写真ではなく、「もの」です。こちらを見てお考えください

 

半笑いで謎の物質を受け渡すオジサン2人

 

受け取った滝沢さんは、ものすごく近い距離で観察していた。チンパンジーに道具を与える実験を彷彿とさせる。

 

何これ……?ゴミにしか見えないけど……

 

 

でも何か、「手が込んでる」というか……ゴミっぽくないんだよな。材質も謎のプラスチック的なものだし、これは自然に発生しない気がする

 

おっ、初めて悩んでますね

 

4問目。初めて”迷い”が生まれた

 

焦げ目みたいなのがついてる意味も分かんないんだよね。調理器具とかなら焦げ目があってもおかしくないけど、こんなプラスチック製品が焦げることあるか…?

 

やっと、クイズっぽくなってきた……

 

よし、決めた!!これは「現代アート」です!!!

 

ここに来て、初めての「現代アート」回答。

彼の判断の根拠は「ゴミっぽくないから」。現代アートを見分けるというよりも、「ゴミかゴミじゃないかを見分ける」というスタンスを貫いている。

ゴミ清掃員として研ぎ澄まされた己の嗅覚を信じた彼の決断は、正しいのか。

 

 

4問目の答えは……

 

 

現代アートです

 

「よっし!!!!!」

 

ところで、この人は喜びのパターンが少ない。記事を書いている現在、僕は「同じような写真ばっかりで単調になるなぁ」と困っている。

彼の写真、「悲しみ」は結構色々なパターンがあるのに、「喜び」のパターンは少ない。きっと、喜びよりも悲しみの多い人生を送ってきたのだろう。

乾いたガッツポーズの写真を見ながら、彼の人生の悲しみに思いを馳せてしまう。企画記事執筆中に”哀愁”を感じたのは初めてだった。涙が邪魔で執筆が進まない。

 

人は悲しみが多いほど、人には優しくなれる

 

ちなみに、このアートの解説は何なの?

 

こちらはですね、時事ネタに対する風刺であると同時に、皆が無為な騒動と議論に踊らされる滑稽さを描き出すという意味でマルセル・デュシャンの「泉」を彷彿とさせる作品で、すなわち現代アートの原点に立ち返るものであり、虚無主義的な立場を取ることによって……

 

何かめっちゃ喋りだした

 

……だから、現代アートというのはある意味、テーゼがアンチテーゼに、アンチテーゼがテーゼにというカタルシスを内包していないといけないんですね。すなわち……

 

今日、時間通り終われるかなぁ…

 

解説はとんでもなく長かったので、要約を掲載しておく。ちゃんと全部聞いて要約した僕を褒めて欲しい。

 

【解説の要約】

あいちトリエンナーレで行われた「表現の不自由展」中止の際、展示を隠すために壁が立てられた。

その壁と全く同じデザイン・寸法の模型を3Dプリンタで出力し、燃やしたり鎮火したりを繰り返した。

壁という、”展示とは全く関係ないもの”を燃やす対象にすることで、表現の不自由展をめぐる”行き場のない議論”を加熱させることの虚しさを描き出した。

作成過程の動画がこちら。

 

アーティストは10分くらい喋っていた

 

 

正解したので、こちらを差し上げます

 

えっ!正解したらもらえるシステムなの…??

 

要らないなぁ…

 

……

 

ちなみに、これは可燃ゴミだね。最近はプラスチックも可燃ゴミとして回収してもらえるから

 

とうとう、ゴミじゃないのに分別の解説始めた。

 

捨てないでくださいね。

 

 

Tips:この現代アートを捨てる場合は、可燃ゴミ

 

5問目:そして始まる、アートの迷宮

はい、まだ先は長いのでサクサク行きましょう。これが5問目です

ただ捨ててあるだけの空きビン。最初ならば間違いなく「ゴミだ」と切り捨てたであろう写真。

だが、ここまでの4問で彼に埋め込まれた現代アートの種は、確実に萌芽の時を迎えていた。

 

 

ゴミ……う~ん、ゴミだと思うんだけどなぁ……置いてある場所がこれ、屋根の上?

 

酒は人間を地に堕とし、自分は天に昇る」みたいなメッセージにも思えるんだよな……汚い灰色の屋根と、ビンの鮮やかな青さとの対比も効いてる気がするし……

 

あっ、もしかしてこのビンの青さは”青空”を象徴している…???

 

めちゃくちゃ深読みし始めた。10分の講義が効いたのかな

 

驚きのビフォーアフターである。人はたった4問クイズを解くだけで、たった10分の解説を聞くだけで、すごい深読みを始めるようになる。

昨今、日本の芸術教育の遅れが叫ばれることが増えたが、全員このクイズをやったらいいと思う。

 

いや、でも騙されないぞ!オレは自分の感覚を信じる。酔っぱらいがぶん投げただけのゴミだと思う。これは、ゴミです!

 

つい深読みしてしまう自分を振り払い、「これはゴミだ」と回答。この判断は吉と出るか凶と出るか……。

 

正解は……

 

 

現代アートです!

 

「くっっっっっっそ!!!!!」

 

うわ~、めちゃくちゃ悔しいわ。でも最終的には「酔っぱらいがぶん投げたゴミ」だと思ったんだよなぁ……直感を信じて間違ったからこれは仕方ない。本当は何なの?

 

これはですね……

 

酔っぱらいがぶん投げたゴミでして……

 

合ってるじゃねえか!!!!

 

キレる剣幕がすごくて、カメラがブレる

 

そうだよね???酔っぱらいがぶん投げたゴミだよね??オレの予想合ってるよね???

 

予想は合ってますが、これはアートです

 

何がどうアートなのよ??

 

このビンにはある種の神性が宿っているんです。というのも……

 

また長くなりそうだ……

 

 

【解説の要約】

作品タイトル:凝縮された神性

「よく見る酒の空きビン」も「灰色の屋根の上」も、ごくありふれた日常的なものである。だが、両者が重なることで非日常性が発生し、目を引く。「なぜあんなところにあるのだろう?」と考えさせるものになっている。

すなわち、「日常性の特異点」が発生している。ここに作者は神性を感じ取った。

更に、後日同じ場所を確認してみると、ビンは消え、同じ場所に仏像が出現していた。

なぜそうなったかは全く分からない。同じように神性を感じ取った者が仏像を置いたのかもしれないし、ビンが神性を帯びた結果、仏像になったのかもしれない。

いずれにせよ、これは宗教の誕生である。複数人が同じものに神性を見い出せばそれは宗教だし、作者が奇跡を信じていればそれは宗教だ。

ちなみに:現代アーティストがこの作品の顛末について書いたブログはこちら

 

解説を聞いた滝沢さんは「もう何も信じられない…」と言っていた。

 

そして取られるワイシャツ。

 

ダイジェスト処理の6~10問目

まだ問題は半分も終わってないのだが、既にこの記事は7000文字を越えた。読んでるあなたも飽きてきたと思う。書いてる僕でさえ飽きてきたのだから間違いない

そういうワケで、ここからはダイジェスト処理でサクサクお送りする。問題と答えは全部お見せしていくので、あなたもアートかゴミか予想しながら読んで欲しい。

 

6問目

問題はこちら。

 

かぶりついて写真に注目する滝沢さん。

これは……何を見せたいんだ…?カビ……?石鹸のような破片が散らかっている。廃墟のような印象を受けるな。”人間の営みの脆さ”を見せたいのか…?”時間が立てば文明は崩壊していくぞ”的な……?

 

もはや、1問目で「ゴミでしょ」と即答していた彼はそこにはいない。自分の直感を信じられなくなった彼は、そこに存在するメッセージを必死で探している。

 

よし決めた!これは、ゴミです!!

 

 

正解は……

 

 

ゴミです!!!

 

よっしゃ!!!!

 

正解:ゴミ(掃除をサボり続けた僕の家の風呂場と、散らかった石鹸)

 

 

7問目

問題はこちら。

 

滝沢さんはこの写真を前に、なぜかオネエずわりになっていた。人は感性を高めようとする時、オネエずわりになるのかもしれない。

 

これは……過去と未来の対比……??昔から変わらない公衆電話と、最近のキーボードの対比が鮮やかだ。そして、技術は進化してるのに、令和になっても未だに親しみがあるのは公衆電話の方だと感じるな……。それが作者のメッセージでは……?

 

決めました!これは、現代アートです!

 

正解は……

 

 

 

ゴミです!!!!

 

 

おいマジで全然分からんぞ!!!
答えを聞いて膝から崩れ落ちる。最初の余裕は完全に霧散した。

 

 

正解:ゴミ(僕の家にあった要らないキーボードを、近所の公衆電話ボックスに置いてみた)

 

 

そして取られるズボン。

 

8問目

問題はこちら。

 

めっちゃ見づらいけど、木にヒモが結んであるな。これがポイントだと思うんだよね……意味ありげだし、自然にこうはならないんじゃないかな……。だとすれば、「縛り付けられる自然」みたいなものを表現してたりするのかな……?

 

 

よし、これは、現代アートです!!

 

正解は……

 

 

現代アートです!!

 

よっしゃああ!!!

 

【解説の要約】

木に結びつけてあるのは電源ケーブル。縛り方は「首吊自殺の際に用いる縛り方」である。

ありふれた日常の中に突然出現する死を象徴している

 

9問目

 

9問目はまた「もの」です。こちらをどうぞ

 

これは……Apple製品の充電器か。MacBookかな?でも、ありえないくらいボロボロだ。一応ガムテープで補修してるっぽいんだけど、全然補修できてない。あちこちで金属線がむき出し

 

普通に使ってたらこんなにボロボロにならないと思うんだよなぁ…。ペンチか何かで外側を切ったんじゃないの?むき出しのケーブルは「感電死」を暗示しているとか……

 

あっ!それだ!!オレ良いこと言ったぞ!よく考えたら、さっきの問題も「ケーブル」で「死」を表していた。つまり、これは連作なんだよ!日常の身近なところに死は潜んでいるぞということを、同じ題材で表現した作品なんだ

 

やった!!ここに来て初めて完璧に解けた!!!これは、現代アートです!!

 

 

正解は……

 

 

 

ゴミです!!!

 

 

 

よし、次に行こう

 

とうとう感情を失くしてしまった

 

正解:ゴミ(僕が普通に3年間使ったMacBookの充電器)

 

 

盤外戦に頼り始める10問目

なくなっていく感情と衣服。心に積もっていく絶望感。

地獄の様相を呈し始めたクイズも、終盤に入った。

 

10問目は、こちら。

 

問題を受け取った時点で、彼の裸の背中には諦めの色が浮かんでいた。

 

ふーん、なるほどなるほど……

 

「ねえ、これぶっちゃけどういう意図?入水自殺とかを表現してるの?」

 

 

僕の表情から答えを読もうとするのやめてください

 

ポーカーみたいなこと始めたぞ。分からないからって

 

彼の精神は既に限界に達している。完全に読み切ったと思った前の問題は大ハズレで、衣服は既にパンツと靴下を残すのみとなった。

弱りきった彼は、もはや「己の感性」には頼れないのだ。正々堂々とは言い難い発想に至るのも、必然なのかもしれない。

 

無秩序を忍ぶよりは、むしろ不正を犯したい。

 

これはゲーテの言葉だが、このときの滝沢さんの心境をよく表しているだろう。自分の感性が信じられなくなった今、彼は無秩序の迷宮の中に置き去りだ。不正だろうが裏ワザだろうが、なんだって使うのだ。

溺れた者は藁をも掴む。彼は必死で現代アーティストの顔を見る。

 

 

 

その時の現代アーティストの表情は、これだ。

 

ゴミを見る顔である。何の感情もない。

ゴミを見るプロであるはずのゴミ清掃員芸人はこの瞬間、ゴミとして見られていた。皮肉なものだ。

 

 

ダメだ……何も分からない……

 

何も分からないまま、虚しく時間だけが流れていく。滝沢さんのうつろな視線は、無意味に写真の上を動き回るばかりだ。

 

さあ、答えを言ってください!

 

何も分からないけど、作為的に作られた感じがするから……現代アートです!!!

 

正解は……

 

 

 

ゴミです!!

 

そんな気がしたよ。この問題は気持ちで負けていたから、当たらない気がした。

 

彼は、安らかだった。大げさに悔しがったりしない。むしろ間違えることで焦燥から解き放たれたような、そんな様子だ。

もしかしたら、彼はこの1問をもう捨てていたのかもしれない。自分の感性を信じられなかった弱さを断ち切るために。次の問題に、全力で挑むために。

 

そして彼は靴下も失い、残すはパンツのみとなった。

図ったような展開である。ラスト1問で、残機1。「野球は筋書きのないドラマだ」というよく知られた名文句があるが、僕は付け加えたい。「脱衣現代アート分別クイズも、筋書きのないドラマだ」と。

 

静寂の最終問題

長かった戦いも、とうとうこれで終わる。最後の1問。

最終問題は、こちらです!

 

僕がそう告げると、滝沢さんは鋭い眼差しで観察を始めた。先ほどまでの弱気な男はそこにはいない。

背水の陣、と言うのだろうか。彼はパンツ1枚になり、「もう後がない」という状態になったことで、最高の闘志が湧いているらしい。

 

ウェディングドレスか……生地は割としっかりしてる。今までと違って、明らかに素材に金がかかっているな

 

普通に考えれば、家にウェディングドレスがあるとは思えないからアート作品なんだよな……でも、それを逆手に取って「実はゴミでした」という大オチの可能性も十分ある……

 

 

 

そしてこの大きな黒いバツ印……。結婚に関連するアイテムだけに、「バツイチ」なんて言葉を想起させる。仮にこれが再婚時のドレスだとすると、「そのドレスは既に純白ではない」「バツがついた花嫁」なんてことを暗示しているのだろうか……

 

彼の表情は、真剣そのものだった。ただひたむきに、目の前のドレスと自分の感性に向き合う。

全裸になるかどうかとか、芸人としての意地だとか、そんなものはもう彼には関係ないみたいだ。ただ愚直に、自分が持てる限りの観察力を駆使して、ドレスを感じ取る。

それはまさに、理想の鑑賞者だ。

 

「ちょっと着てみるわ」と、自然に着始めた時は驚いた

 

そして、その時は訪れる。滝沢さんの最終回答だ。

 

決めたよ。

 

回答は、どちらでしょうか?

 

これは、ゴミです!キミはなんらかの企画で使ったウェディングドレスを、この機会に使いまわしたんだろ!?これはキミの家にあったゴミだ。オレはそう読んだ。

 

冷静な目で、しかし確かな情熱を持って、彼は「ゴミです!」と叫んだ。

今日の戦いを締めくくるラストアンサーは、冷静と情熱の間で静かに響き渡った。

 

 

正解は………

 

 

 

 

ゴミです!!

 

 

見事正解を掴み取った彼は、今日一番のガッツポーズを見せた。

ありありと浮かび上がる腕の筋肉、首筋の血管。最初で最後の完全な自力正解の歓喜に、彼は震えていた。

 

よっしゃああ!!!

 

お見事です。読みも完璧でした。僕の家になぜか要らないウェディングドレスがあったので、好都合とばかりに流用したものです。素晴らしい鑑賞でした。

 

最後の最後、意地を見せることができたね。

 

滝沢さんは、誇らしげに笑っていた。

「喜びのパターンが少ない」なんて言ってしまって申し訳なかった。最後の砦を守りきった彼は本当に嬉しそうで、大きな仕事をやり遂げた男の顔をしていた。

 

滝沢さんからの宣伝

やり遂げた良い顔だったので、その流れで著書の宣伝をしてもらった。

彼は今年の8月、新しい本を出したという。そのタイトルは、「ごみ育」。

 

この本には、”ちゃんとした”分別クイズが50問載っている。主に子どもを対象とした本だ。

「なぜゴミを分別する必要があるか?」から始まり、「フードロス」や「海洋プラスチック」といった社会問題にまで、クイズに答えながら楽しく学ぶことができる。

今回、滝沢さんがクイズを解きながら現代アートについて驚くべき速さで学んでいたように、子どももクイズに答えることで、間違いなく質の高い学習ができるだろう。小学生くらいのお子さんをお持ちの皆様は、ぜひご購入を検討されたい。

 

また、コミックエッセイ「ゴミ清掃員の日常」と、エッセイ「このゴミは収集できません~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~」も好評発売中である。

「一般家庭からえのきバターが30リットル排出されていた」といった、清掃員ならではの驚きの体験がコミカルに描かれている。大人の方はこちらをぜひどうぞ。

 

 

終幕、そして。

こうして、全11問のクイズと、宣伝が終わった。

あとは、解散を残すのみである。

 

では滝沢さん、今日はお疲れ様でした。お帰りください。ありがとうございました

 

あ、これ忘れないでくださいね

 

 

え、あ、うん……

 

……

 

いや、えっと……着替えとか……

 

お疲れ様でした。

 

お疲れ様でした。

 

 

 

いや、あの………

 

お疲れ様でした。

 

お疲れ様でした。

 

……

 

「お疲れ様でした。」「お疲れ様でした。」

 

…………

 

 

 

 

彼は一人、薄暮の住宅街に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、いかがだったでしょうか。

これが今回、私が皆さんにお見せしたかった最後の現代アート作品「奪われた男」です。

 

彼はこの後、行き場を求めてさまよいます。パンツ一丁で、片手に現代アートを持って。

じきに自分の名前さえも言えなくなり、ただ現代アートを求める妖怪になるのです。

そして、「現代アートはどこだ…」とつぶやきながら、現代アートのことを考えている人のもとにやってくるでしょう……。

現代アートのことを考えている人……それはつまり……

 

この記事を最後まで読んだ、あなたです

 

きっと彼は今晩、あなたの家に行きます。

夜中に耳元で「現代アートはどこだ」と聞こえても、決して後ろを振り返ってはいけません。あなたも、現代アートを求める亡霊になってしまいますよ……?

 

 

 

※この物語はフィクションです。

 

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Ken Horimoto
堀元 見

企画屋です。変なイベントをやったり変なWEBサイトを作ったりしながら生計を立てています。

好きなものはトンカツとインターネット。(性格が)悪そうなヤツはだいたい友達。

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