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むだそくんについて

一発屋芸人AMEMIYAは麻薬である。惨劇とカタルシスに、快感を覚えるしかない。

面白いもの

2011年に流行った、AMEMIYAという芸人を、皆さんは覚えているだろうか。

画像はCDジャケット(https://amzn.to/2Dy2nEe)より引用

 

「冷やし中華はじめました」というネタで一世を風靡した。そして、すぐに消えていった。

流行から8年が経つ。皆さんはもうAMEMIYAの顔を思い出すこともなくなっていたのではないだろうか。

僕もこの8年間、彼の顔を一切思い出すことはなかった。酔っ払った深夜のカラオケボックスでたまに「冷やし中華はじめました」を入れる時以外には。

 

そんな中、つい先日のことだ。友人が「AMEMIYAのYouTubeチャンネルを見つけてしまった。ひどい歌ばかりだ」という趣旨のツイートをしていた。

僕は一発屋芸人の生態を分析するのが好きなので、この友人のツイートを見てすぐに、YouTubeの検索ウィンドウに「AMEMIYA」と打ち込んだ。

そしてたどり着く彼のYouTubeチャンネルが、こちらだ。→AMEMIYAtube

 

チャンネル登録者数3400人。当時「冷やし中華はじめました」の着メロが何万とダウンロードされていたことを考えると、このチャンネル登録者数は盛者必衰の理をあらわすという感じの味わいがある。

 

うわあ…AMEMIYAさん、今は人気ないんだな……

最初はそのくらいの気持ちでチャンネルを見始めた。

 

だが、このチャンネル、見れば見るほどホントウにひどいのである。その様子はもはや「落ちぶれた」とか「つまらない」とかではなく、惨劇という表現がピッタリくる。

僕はあまりの惨劇っぷりに目を疑い、この惨劇が何なのか夢中で考えた。そして、動画を全部見てしまった。貴重な休日を5時間以上浪費して、AMEMIYAの動画を見続けてしまった。

5時間あれば読みたいと思っていた本を読むこともできたし、気になっていた美術展を見に行くこともできた。だが僕は、一心不乱にAMEMIYAの動画を見続けてしまった。後悔が尽きない。

 

そんな時間の浪費を経て、結論づけた。AMEMIYAのチャンネルは、まるで麻薬みたいだ。

AMEMIYAのチャンネルには大量の惨劇と、それを越えた先にあるカタルシスが存在する。

今日はその事実を、皆さんにお伝えしたい。

 

惨劇①動画を見る前から不可解

AMEMIYAのチャンネルを見てみるにあたって、僕はまず一番古い動画を見ようと思った。

「アップロードされた動画」をクリックし、一番下までスクロールすると、この画面になる。

 

僕はこの時点で、既に不可解さを感じていた。皆さんにはこの不可解さがお分かりだろうか。

注目すべきは、このナンバリングである。

 

最古の動画が、「#4」から始まっているのである。

#1~#3はどこに行ったのか?ボツになったのか?何の説明もない。

更に我々を混乱させるのは、#4から後はちゃんと全ての番号が揃っていることである。せめて他にも欠番があれば「ああ、ボツにしたものもカウントに入れているんだな」と解釈できるのだが……。謎だけが深まる。

動画を見にやってきた視聴者をいたずらに不安にさせるあたり、惨劇の前フリを感じる。

 

だが、不可解さを気にしていてもしかたない。先に進もう。

 

惨劇②最初だけ、ホントウに最初の1本だけ面白い

最初の動画(といっても、ナンバリングは#4だが)はこちら。

 

最初に言っておく。この#4は割と普通に面白い

後述するが、AMEMIYAのチャンネルは、ほとんど全ての動画が下ネタと便乗のオンパレードでひどいものなのだ。しかし、#4だけは普通に面白い。

 

#4のテーマは「甲子園、来年のテーマソング」である。「この曲を甲子園でぜひ使って欲しい」という趣旨の説明とともに、演奏が始まる。

 

曲は、爽やかなコード進行で始まる。「ゆず」を彷彿とさせる青春ソングという感じだ。

実際に甲子園のテーマソングに採用されてもおかしくないような爽やかな歌詞と展開。

 

だが、サビに近づくにつれて歌詞がおかしくなる。

 

 

ボールがなくなることへの恐れについて言及し始める。

 

「キャッチボールするんだ」という指令の後にも、

 

ボールがなくなることへの恐れにケアが入る。

 

 

Cメロでは、ボールがなくなった場合の話に触れる。

ボールがなくなった場合には……

 

キャッチャーの後ろに立っているおじさん(審判)に頼めばボールをくれる」という解決策を示す。

 

このように、#4の動画は、なぜかボールがなくなることに対して異常な恐れを抱いているという実にシュールなネタである。

これは普通に面白いと思った。「冷やし中華始めました」よりこっちの方が僕は好きだ。

ネタ「冷やし中華始めました」は、「冷やし中華始めました」の一言の裏に地獄のような物語が隠されている可能性を示唆するというシュールさがウリだったが、この#4は「なぜか異常にボールがなくなることを恐れている」というシュールさだ。

この#4の動画は、AMEMIYAが得意とするシュールで面白い曲をちゃんと仕上げている。僕はこれを見た時、

なんだ。普通に面白いじゃないか。これでなぜチャンネルが流行らないんだろう

と思った。

 

だが、僕は後からこの考えを大きく覆すことになる。

いっそ全ての動画がひどかったら良かったのに……なまじ#4だけ面白いから、ひどさをウリにもしづらくなってしまってるよ……!

と。

 

そう、中途半端に1つだけ面白いものがあると、イジりにくくなってしまうのだ。

振り返ってみれば、これが惨劇の始まりであった。

 

さあ、皆さんをお待たせして申し訳なかった。次から、本格的に惨劇を見ていこう。

 

惨劇③プロが作ったとは思えない便乗ネタ

基本、#4以外の動画はどれもひどいのだけど、特にひどいのがこの#6だ。

わかはげ体操第一」という、何のひねりもない「ようかい体操第一」の便乗ネタである。

2014年当時、人気絶頂であった妖怪ウォッチに思い切りあやかろうというネタだ。だがこのクオリティがホントウにひどい。

 

薄毛の後輩芸人に「ハーゲルハーゲル……」と踊らせるという、宴会芸以外の何物でもないネタだ。

 

一応、全ての歌詞を替え歌で歌っているのだが…。

彼女にフラれたのは、若ハゲのせい」という、素人の宴会芸の中でもクオリティが低めの部類に入るしょうもない替え歌である。

 

仮にも一世を風靡したことがあるプロの芸人が、なぜこんなひどい替え歌を作ってしまうのだろう。

何かの間違いかと思って一応歌詞を全部書き起こしてみたが、やはり素人が忘年会の出し物のために用意したみたいな歌詞だった。

以下、書き起こした歌詞の全文。

 

『わかはげ体操第一』

※ハーゲルハーゲルハーゲルハーゲル

帽子なしでは出られんけん

ハーゲルハーゲルハーゲルハーゲル

帽子なしでは出られんけん

帽子で帽子で抜け毛を防止で 髪の毛大事!

わかーハゲーハゲー コナカッチ!※

カイカイ頭皮クイクイ海藻来い来い毛根 コナカッチ!

今日は朝から毛が抜けた。夢の中では生えたのに

どうして髪は抜けるんだ?

どうして髪は抜けるんだ?

ドォワッハッハー!

わかはげのせいなのね そうなのね!

ウォッチ!今何本? 800本…。

ウィッス!

(※繰り返し)

カイカイ頭皮クイクイ海藻来い来い毛根 コナカッチ!

どうしてあの娘にフラれたの?昔はイケメンなのに?

どうして僕ちゃんフラれたの?

どうして僕ちゃんフラれたの?

ドォワッハッハー!

わかはげのせいなのね そうなのね!

ウォッチ!今何本? 400本…。

ウィッス!

(※繰り返し)

ハゲてる上に部屋ゴミ屋敷アシアシクッサー バッチッチ!

 

アシアシクッサー バッチッチ!」ってお前……プロの芸人が書いた歌詞の最後が「アシアシクッサー バッチッチ!」ってお前…。

そう、書き起こして見れば何か仕掛けがあるかと思ったが、全くなかった。むしろ、歌詞のひどさがより一層骨身に染みた

小学生の頃「漢字は書いて覚えなさい。見てるだけじゃ身体が覚えないから、書いて覚えなさい」と先生に言われた記憶があるが、今回の書き起こしも全く同じ効果があったように思う。最初に聴いた時に比べてより一層歌詞のサムさが感じられた。サムいものは書き起こしてはいけない。今日の知見である。

Tips: 書き起こしによって背筋が凍ってしまうので、サムいものは書き起こしてはいけない

 

惨劇④ まさかの「妖怪ウォッチに引きずられる」事態

我々の精神を凍りつかせた「わかはげ体操第一」の次の動画が、「#7 謎の男の仕業かも」である。

内容としては、身の周りの不思議なことを「謎の男の仕業」にしていくというもの。

 

一例はこちら。

 

 

携帯に登録されてる記憶にない人たち 謎の男に入れられたんだろう

 

このように、いろいろなものを謎の男のせいにしていく。

賢明な皆様はもうお分かりだろうか。これ、ネタ作りにおいてプロの芸人とは思えないひどい現象が発生している。

 

……そう、発想が思い切り妖怪ウォッチに引きずられているのだ。

画像引用:http://anicobin.ldblog.jp/archives/40251735.html

 

妖怪ウォッチはいろいろなものを「妖怪のしわざ」にしていくが、AMEMIYAも完全にこの妖怪ウォッチに引きずられて「謎の男のしわざ」にしていく。

1つ前の動画で「ようかい体操第一」をテーマにネタを作ってしまったせいで、マインドが妖怪ウォッチになってしまったのだろう。

AMEMIYAが妖怪ウォッチを覗き込んでいるとき、妖怪ウォッチもまたAMEMIYAを覗き込んでいるとでも言うべきだろうか。

 

そこはプロなんだから「あ、これ発想が妖怪ウォッチに引きずられているからやめよう」と自重して欲しかったものだ。

 

更に言えば、この「#7 謎の男の仕業」のひどい要素は、妖怪ウォッチに引きずられていることに収まらない。

歌詞の続きを見て欲しい。

 

 

 

直接的で生々しい下ネタ(しかも大して面白くない)である。

 

そう、AMEMIYAはものすごい頻度で下ネタに頼る

しかも、この下ネタが本当にひどいのだ。

「えげつない大人の下ネタ」と「小学生みたいな下ネタ」という2種類を使い分けてきて、見る者はひどさの波状攻撃にさらされることになる。

一つずつ見ていこう。

 

惨劇⑤ えげつない下ネタ

AMEMIYAの特徴として、前述の「セックスの最中口に入っている毛」のように、直接的な下ネタを放り込んでくるということが挙げられる。

そんな直接的な下ネタに100%頼り切ったネタが、こちらの「#5 リニア新幹線のテーマ」である。

 

 

このように、子供向けの「はたらく車」的な曲を思わせる始まり。

続いて、「東京-大阪間を1時間で結ぶ」といった情報をちゃんと盛り込んでくる。ここまでは普通の子ども向け楽曲のようだ。

 

続いてBメロ。リニアのお陰で遠距離恋愛が楽になるという、リニアのメリットを歌う非常に良い展開。

 

 

しかし、この直後のサビで、我々は一気に振り落とされることになる。

 

 

いやそんなサビあるか!!

見たことないほどひねりのない下ネタに、「いやそんなサビあるか!」とツッコまずにはいられない。

一方で、「キースしてヤッてー きもちいいー」は、メロディーがとても美しくて小気味いい。シンプルで力強いコード進行で歌い上げる「きもちいいー↑」の部分は耳に心地よく残り、いつまでも頭から抜けない。

このフレーズは執拗に繰り返され記憶に残るため、この動画を見た後、ふとしたときに「キースしてヤッてー きもちいいー」と歌ってしまう。メロディーが美しいので、歌ってしまう心地よさがある。

作曲能力をこんな形で悪用しないで欲しいと心から思う。「キースしてヤッてー きもちいいー」などという最低の歌詞に、美しいメロディーをつけないで欲しい。

 

ちなみに2番のサビはもっとひどくて、こうなる。

「彼女に会うために大阪に向かうリニアの車内で、富士山を見て勃起する」というひどすぎる歌詞である。もちろんメロディーは美しく、キレイに歌い上げている。繰り返すが、こんな最低の歌詞をキレイに歌い上げないで欲しい

 

こんな調子で、「#5 リニア新幹線のテーマ」は最低すぎる歌詞を連発しながら進んでいく。

既にこのネタの評価は「最低だ」で動かない。だが、最後にこのネタはもう1つ展開するのである。

 

なんと、遠距離恋愛中の彼女が浮気相手とホテルに入っていくのを見つけてしまう。

なぜ「ホテルたこ焼き」などという、ネタの本筋から気が散るホテルの名前を設定したのか理解に苦しむが、今は置いておこう

 

 

男は、彼女が出てくるのを待つ。待たされに待たされて、彼女が出てきたのは実に4時間後だった。

4時間に及ぶ浮気を終えて出てきた彼女に、彼が投げかける言葉はこれ。

 

「お前は”こだま”かー!」

 

ちょっと上手いこと言った!!

東京-大阪間で4時間かかる”こだま”を長いセックスの比喩として使った。すごい。巧みだ。

「リニアは東京-大阪間を1時間で結ぶ」「リニアは速い」という序盤の歌詞を、伏線として見事に回収する展開。

曲の前半9割が最低すぎるのでこのネタの評価は「最低」で覆らないのだけれど、最後の展開はとても良いと思う。僕は笑ってしまった。この巧みな比喩の能力を最後だけでなく、途中の露骨すぎる下ネタに使ってくれればもっと良いネタになっただろうに……。

 

そんな最後の展開に舌を巻きつつも、最低すぎる「キースしてヤッてー きもちいいー」のメロディーが頭から離れなくなってきたら、我々は既にAMEMIYAのカタルシスに向かって惨劇を歩き始めている。

さあ、次に行こう。

 

惨劇⑥ 小学生みたいな下ネタ

前述の「わかはげ体操第一」もそうなのだが、AMEMIYAは突然小学生みたいなしょうもないネタを作ることがある。

下ネタについても同様で、先ほどまでのエゲツない下ネタと違い、本当にしょうもない下ネタを突然放り込んでくることがある。

例えば、「#9 一歩前へ」はその代表格だ。

 

一歩前に出る勇気が出せないすべての人へ、といういい感じのMCから始まる。

 

ギターの入りと同時に強いボーカル。いきなり歌い出しがサビのパターンだ。

 

そして、こう続く。

ホントにしょうもない題材設定。小学生みたいだ。

AMEMIYAのパターンに慣れ始めた読者諸賢はだいたいもうお分かりだと思うが、このネタはもうこの題材でずっと行くつまり全然面白くない

 

このしょうもない題材設定で4分ちゃんとやりきるところがAMEMIYAのすごいところであり、ひどいところでもある。

4分あるので一応いろいろな展開はある(公衆トイレあるあるを歌ってみたり、芸能人のポジションをイジってみたり)のだけど、基本的にずっと小学生みたいなしょうもない歌である。これと言って面白くはないので解説はしない。気になる人だけ動画を参照されたい。

 

このように、AMEMIYAのチャンネルには「おしっこ」「うんち」「ちんちん」といった小学生っぽい単語を連呼する下ネタも散見される。

この頃になると僕は、下ネタに頼るなとまでは言わないけど、せめて下ネタの方向性を統一して欲しい…という強い思いを抱き始めていた。

 

惨劇⑦ 便乗ネタと下ネタの融合

さて、AMEMIYAの惨劇を支える二大要素「便乗ネタ」と「下ネタ」を見てきた。

AMEMIYAの大抵の動画には、この二大要素のどちらかが含まれているため、「なんだこれひどい…」という気持ちになる。

だが、たまに二大要素が両方同時に含まれているパターンもある。

 

例えばこれ。

 

 

「#11 あとひとり」である。見覚えのある曲名だ。

再生すると「ワイドショーを賑わしている元ファンキーモンキーベイビーズの加藤さんへ」的なメッセージが出てくる。

曲名を見た時点でもしかしてと思ったが、案の定ファンキーモンキーベイビーズ「あとひとつ」の替え歌である。

そう、この時期はファンキー加藤氏の隠し子騒動があったのだ。そして、AMEMIYAは話題になっていた隠し子騒動に露骨に便乗した形である。

 

替え歌の内容はこんな感じ。

 

名曲「あとひとつ」のメロディーに乗せて、

あとひとりくらいなら ひとりくらいなら 食わせて行ける 財力はあるって

と歌う。名曲を完全に破壊しに来ている。

 

そして、こう続く。

 

 

何人でも 俺の子じゃなくても 認知する〜〜〜〜↑↑

 

あまりにも有名な「あとひとつ」のキレイなメロディーで最低の歌詞をきっちり歌い上げる。

前述の通り、ひどい歌詞をキレイなメロディーに乗せるのはAMEMIYAの得意技だが、とうとう他人の曲を使ってそれをやり始めてしまった。

最初のワンコーラスだけで既に最低すぎて舌を巻くのだが、この後も一貫してずっとひどい。

 

 

俺はファンキーモンキーさ だからベイビーできたのさ

と、バンド名をこれでもかというほどイジり……

 

今いつもより ちょっと勇敢なお父さん

と、とうとう別の曲までイジり始めてしまう。

AMEMIYA自身、歌詞を考えてる内に楽しくなってしまったのだと思う、ファンモンをイジる要素をふんだんに散りばめた、ムダに完成度の高い一曲になっているし、心なしか歌う様子も普段より楽しそうに見える。

 

さて、AMEMIYAがなぜ執拗に便乗ネタを繰り返すかといえば、恐らくは再生数を稼ぐためであると思われる。

話題性のあるものに乗っかることで、一緒に注目を浴びようという魂胆であろう。

 

では、目論見通り「#11 あとひとり」の再生数は伸びたのかというと……

 

 

全く伸びていない。なんなら他の動画より少ない。

 

注目されるために便乗したのに注目されずに終わる感じ、悲しみが伺える。

再生数のケタが「あとひとつ」大きければ、やった甲斐もあったろうに。

 

惨劇⑧失敗してるのに、繰り返される便乗

「#11 あとひとり」は全く再生数が伸びておらず、便乗作戦は完全に失敗している。

にも関わらず、なぜか便乗ネタに味をしめたらしく、次の動画も便乗ネタである。

それがこちら。「#12 ゲゲゲのねずみ都知事」である。当時問題になっていた舛添都知事について、「ゲゲゲの鬼太郎」の替え歌で歌っている。

だが。ウィットに富んだイジり方で上手にまとめた「#11 あとひとり」と違い、こちらの動画は普通に替え歌で政治問題を取り上げただけという凡作である。

舛添さん、ファンモンに比べてイジりにくいかったんだろう。ヒット曲とかないし

 

その結果、再生数は#11よりも更に小さくなる。

 

これでもう便乗ネタは懲りただろうなぁ、と思う。事実、次の#13は便乗ネタではない。

 

ところが、#14は再び便乗ネタに戻ってくる。それがこれ。

「広島カープが優勝しそうだから、広島応援ソングを駆け込みで歌った」という趣旨。

 

 

 

再生数は下げ止まることを知らない。もうやめたらいいのに…!!

分からない。何もかもが不可解だ。AMEMIYAのチャンネルはどういう方針で運営されているんだ。並んだ大量の動画が、そんな悩みを我々に投げかける。

その様子はまるで、深遠な問を投げかけたままじっと口を閉ざしているソクラテスのよう。

AMEMIYAのチャンネルとは一体なんなのか?彼は何を思い、ネタを作っているのか?人はなぜ生きるのか。そして、僕はなぜ丸一日潰してこんな動画を見ているのか

AMEMIYAの動画を回遊している内に、そんな数々の問が頭を巡ることになる。

AMEMIYAのチャンネルは、哲学なのかもしれない。哲学者の本質は、解を見つけることではない。問を投げかけることだ。

見る者の頭に次々に問を生じさせるAMEMIYAのチャンネルは、哲学なのかもしれない。

 

そして、「おっぱいは偉大」へ

数々の問を投げかけてきたAMEMIYAのチャンネルだが、「#15 おっぱいは偉大」で1つのフィナーレを迎えることになる。

曲名からすぐに分かるように、この曲もAMEMIYAのお家芸である「下ネタ」に支えられている。

だが、1つの荘厳なフィナーレ、カタルシスを迎える瞬間があるのだ。

以下、細かく見ていこう。

 

歌い出しは、「女性アスリート達の試合観る」である。

この時点で大体の展開は予想できる。曲名でネタバレしちゃってるからね。

 

案の定、「試合の内容よりもおっぱいが気になる」という展開になる。

100人中100人が展開を予想できる、これほどまでに意外性のないネタがかつてあっただろうか

 

その後、「トレーニングでおっぱいが削られている上に、ピッチリした服で抑えつけられていて大丈夫か」みたいにつながっていく。

 

「おっぱいがしんぱい」と韻を踏んでおり、そんなしょうもない歌詞で韻を踏むなという怒りを抱えたりもしながら、曲は進んでいく。

 

サビは曲名の「おっぱいは偉大」を連呼するというもの。ここまでのAMEMIYAの動画で繰り返し見てきたパターンだ。我々は、しょうもない下ネタで終わっていくいつものパターンだと思って油断して見ることになる。

 

2番が終わっても、特に新しい展開はない。

動画の残り尺も1分ほどになり、視聴者が油断してスマホを取り出しかねないその瞬間、事件は起こる

 

 

コーラスの女性が突然乱入してくるのだ。

いつものようにこのまま終わっていくとばかり思っていた視聴者はこの展開に面食らう。

  • 誰なんだこの女性は。
  • おっぱいが大きい。
  • 歌が上手い。
  • マドンナみたいな大げさな動きだ。
  • それにしてもこの歌、歌詞がひどい。

錯綜する思いの数々が溢れ出してくる。溢れ出す感情の渦が制御できない。脳のキャパシティを完全に越えて、一斉に色んなことを思ってしまう。

 

そして、そんな混乱した脳にこそ、音楽は染み入る。

女性出現後にひたすら繰り返される壮大なコーラスパートに、無条件に心を掴まれてしまう。抗うことはできない。

 

意外な展開への驚き、コーラスが入って完成する美しいハーモニー、女性のムダに高い歌唱力、全ての要素が三位一体となって、心を鷲掴みにされてしまう。

 

これはWe Are The Worldだ」と僕は思った。

途中から歌唱力の高いゲストが入ってくることや、シンプルなメッセージを連発すること、耳に残る美しいハーモニー、全ての要素がWe Are the Worldと同じだ。

 

アメリカ国内だけで750万枚を売り上げたという伝説の「We Are The World」に劣らない、いや、あるいは上回るカタルシスを伴って、「おっぱいは偉大」は我々の脳を揺らす。

なぜ、たかが1発屋芸人と素性の分からない謎の女性の二人組が、錚々たるメンバーが揃い踏みであった「We Are The World」に勝てるのか、それは、フリが効いていることに起因する。

ここにたどり着くまでに見てきた、AMEMIYAの数々のしょうもない動画という惨劇が、大いなるフリになっているのだ。

  • 最初から最後までひたすらつまらなかった「わかはげ体操第一」。
  • ただただ下ネタだけだった「一歩前へ」や、下ネタと便乗のハイブリッドであった「あとひとり」。
  • ホントウに最低のえげつない下ネタに頼り切りだった「リニア新幹線のテーマ」。

そういった今までの全てが、フリとして完璧に機能している。どうせこのまま終わっていくのだろうという視聴者の油断を誘っている。

そしてこの「おっぱいは偉大」の中でも、序盤で「女性アスリートの試合」→「試合よりおっぱいが気になる」という極めてしょうもないかつ予想しやすい展開を見せている。このこともフリとして効いている。どうせこのまま終わっていくのだろうという油断を強めるばかりだ。

 

視聴者を最大限に油断させてから、その油断は大いに裏切られる。出現する巨乳の女性、女性の出現によって完成す重層的なハーモニー。

これは視聴者にとってまさに青天の霹靂であり、大いなる混乱を巻き起こす。

その混乱に乗じて脳に入り込んでくる「おっぱいでかい(ビッグパイパイ)」という謎のコーラス

湧き上がってくる感情と入ってくる情報が処理できず、脳がオーバーフローを起こす。

脳がおかしくなる体験は、快感である。麻薬にせよ飲酒にせよ、全ては脳がおかしくなる快感に過ぎない。

だから、AMEMIYAのネタはもはや麻薬なのかもしれない。脳をおかしくさせ、大いなるカタルシスを引き起こす。出てくるものは笑いとも感動とも言えない、得体の知れない快感だ。

面白いのかと言われれば、よく分からない。けれど、そこには壮大なカタルシスがある。長い長い惨劇と、それを越えた後のカタルシスがある。既存のお笑いの軸で評価できない価値だけど、それはそれでいいんじゃないか?

 

惨劇とカタルシスが、たくさんある。

以上、AMEMIYAのチャンネルに含まれる惨劇と、それを越えた先のカタルシスについて見てきた。

今回は、最初の10本ほどの動画だけを引用しながら記事を書いたが、AMEMIYAのチャンネルには50本を越える動画がある。そのそれぞれに、多種多様な惨劇がある(そして、「おっぱいは偉大」ほどではないが、カタルシスを感じる瞬間は他にも存在する)。

だが、その全てを紹介することはできない。この記事はもう1万文字を越えようとしている。長くなりすぎてしまった。

あとはぜひ、皆さん自身の目で確かめて欲しい→AMEMIYAtube

そして、4ヶ月ほど動画の更新がない。このまま終わってしまうのはあまりにも寂しいから、ぜひみんなチャンネル登録をしておいてあげて欲しい。

 

一応、これから惨劇とカタルシスを探す皆さんのためにガイドラインとして、いくつか見どころを抜き出しておく。

 

  • 「すごいぞ備長炭」という完全に方向を見失ったネタ。
  • 「熱い夫〜婦〜らーめん」とかいう、クソほどスベってるプロデュース商品。
  • 上記のプロデュース商品を自分で作って食べている動画(目を疑うほどつまらない)
  • そして突然の4ヶ月に渡る動画休止。
  • AMEMIYA、ひょっとして死んでるのでは…?不安になる。
  • 生存が不安になり、見に行ってしまうアメブロ(チャンネル上から飛べる)。
  • ブログには上がり続ける元気で営業に飛び回っている様子。よかった生きてるという感動。
  • しかし、感動の後にブログに腹が立ってくる。何回同じタイトル(熱い夫婦ぅ〜は〜じめましたぁ〜)で更新するんだ。
  • ブログの内容、目を疑うほどつまらない。これマジで???
  • 「新婦さま綺麗でしたね〜(*´∀`)」じゃねえよ。グラビアアイドルかお前は。
  • 全然面白くないタイトルが並ぶブログに忽然と出現する「USHIWAKA MARU AWARD」という面白い文字列。

 

AMEMIYAにはまだまだ見どころがあるので、気が向いたらいつか第二弾を書くかもしれない。

 

まとめ

  • AMEMIYAの動画は、最初だけ普通に面白く、あとは惨劇。たまにカタルシスがある。
  • サムいものは書き起こしてはいけない。
  • AMEMIYAが妖怪ウォッチを覗き込んでいるとき、妖怪ウォッチもAMEMIYAを覗き込んでいる
  • ふとした時に「キースしてヤッてー きもちいいー」という最低のフレーズが浮かんでしまう。
  • AMEMIYAは哲学。
  • AMEMIYAはWe Are The World。
  • AMEMIYAは麻薬。

 

お願い

AMEMIYAの動画を見ることや、この記事を書くことに対して膨大な時間を費やしてしまった。後悔が尽きない。

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こいつ

 

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補足情報

  • アイキャッチ画像はhttps://news-sokuhou.site/post-2777より引用し利用した。
  • その他、全てのキャプチャ画像は掲載したYouTube動画より引用し利用した。
author
Ken Horimoto
堀元 見

インターネットおもしろ雑文オジサンとして生計を立ててます。(性格が)悪そうなヤツはだいたい友達。

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