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慶應理工学部卒の僕が「ピカチュウで家の電力は賄えるか?」を真面目に考察

ネタ

先日、自分の時間をクラウドファンディングで売りに出しました。

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その結果、信じがたい依頼がたくさん寄せられたのですが、そのうちの一件がこちら。

のみさん
2時間を自由に使って良いとのことだったので、私のブログで触れている「ピカチュウで家の電力は賄えるか」というテーマについて記事を考えて頂けますか?

今までの記事は以下の2編です。

http://nomi3.hatenablog.com/entry/2016/09/18/070000

のみさん(@thisisnomi3 )から寄せられた「ピカチュウで家の電力は賄えるか」について考察せよという依頼でした。

堀元
何言ってるんだこの人

信じがたいことに、この人は自分で考察するだけでは飽き足らず、このために3500円を僕に投資してまで「ピカチュウで家の電力を賄えるか」を考察してほしかったようです。

何が彼をそこまで駆り立てるのでしょう?

そんな謎も抱えつつ、とにかく考察を始めました。

で、せっかくなので、理系の研究発表っぽく書きます。卒論発表に向けて怯えている理系の大学4年生は、参考にして下さい。

 

1. 概要

本稿では、ピカ発電によって一般家庭の消費電力を賄うための方法について論じた。

先行研究の問題点を指摘するとともに、新たに必要なピカチュウの数を計算し直して実用可能性を検討した。

検討の結果、ピカ発電の実現可能性が十分あることと、今後の課題が示された。

 

2. 背景

近年、ピカチュウの大量発生が社会問題になっている。繁殖力が強くねずみ算式に増えるピカチュウの駆除は困難である。

大量発生したピカチュウによる被害を防ぐために保健所による殺処分が後を絶たず、そこの莫大な公費が投入されている。

大量発生したピカチュウを有効活用するためにも、ピカ発電によるピカチュウの利用が望まれている。

また、ピカチュウによって家庭の電力を賄うことができれば、全く新しいバイオエネルギーとしてピカチュウを活用することが考えられるとともに、二酸化炭素排出量の削減等の環境問題への寄与が期待できる。

 

 

3. 先行研究とその問題点

ピカチュウの電力を家庭で活用しようとした研究として、「ピカチュウで家の電力は賄えるか①」[2016, のみさんet al. ]や、「ピカチュウで家の電力は賄えるか②」がある。

3.1 電流の仮定

のみさんらの研究では、ピカチュウの電圧を10万ボルトであると仮定している。(言うまでもなく、電気タイプの技「10まんボルト」から)

また、「サトシの人体は電気に強く、人の致死量くらいの電流に耐えていると考えられるから」という根拠で、サトシに流れる電流を100mA(人の致死量)と仮定している点に問題がある。

仮にピカチュウが発生させる電圧が10万ボルト、サトシの身体に流れる電流が100mAだとすると、

電圧 [V] =電流 [A] × 電気抵抗[Ω]

というオームの法則から、100mAは0.1Aなので、

10万[V] = 0.1[A] × サトシの身体の電気抵抗[Ω]

となり、この式を解くと、

サトシの身体の電気抵抗 = 100万Ω

となる。

この値が妥当かどうかを検証するために、日本財団図書館電装作業安全衛生ハンドブックより人体の電気抵抗を算出してみよう。

人体の電気抵抗は、皮膚の抵抗と人体内部の抵抗に分けられる。皮膚の抵抗は、印加電圧の大きさ、接触面の濡れ具合等によって変化する。皮膚が乾燥し、硬質化した状態であれば10,000Ωくらいあるが、発汗しているとその1/12、水に濡れていると1/25まで低下するといわれている。また、印加電圧が1,000V以上になると、皮膚の抵抗は破壊されて内部組織だけの抵抗になる。

原文ママで引用したが、要するに人体の電気抵抗は大きく見積もっても1万Ωしかないということだ。

この値は先程算出したサトシの身体の電気抵抗の1%しかない。先程の計算の異常性がわかる。

 

さらに言えば、1000[V]を超える電圧をかけると、皮膚の抵抗は破壊されて内部組織だけの抵抗になる。

今回は100万[V]の電圧をかけている想定なので、当然、内部組織だけの抵抗になっている。

人体の内部組織の抵抗は、印加電圧に関係なく500Ω程度である。

つまり、「100万ボルトを受けるサトシの身体の電気抵抗は500Ωにある程度近い値である」と言えよう。

 

ここで、受ける可能性のある反論について触れておく。それは、

サトシは度重なる電流を受けることによって、電流への耐性がついていたのではないか?

という議論である。

無論、その可能性はある。

だが、電気抵抗は耐性がどうこうではなく、物質の組成によって決まる。

サトシの身体の構成成分が大きく変わった(例えば、皮膚がゴムになった)というような荒唐無稽な仮説は考えにくいだろう。

したがって、電気抵抗は常人のままだと考えられる。耐性がついたとすれば、「常人よりも大きな電流に耐えられる」という点である。

だとすれば、やはり先程の計算はおかしい。500Ω程度であるべきサトシの身体の電気抵抗が100万Ωになってしまうのは、間違いと言わざるを得ない。実に本来の2000倍の抵抗である。

先行研究においては、流れる電流が100mA(人間の致死量)と仮定した点に問題がある。

サトシの身体の電気抵抗を平均的な値に設定し、流れる電流を算出すべきである。

 

3.2 電圧の仮定

そもそも、ピカチュウの「10万ボルト」が本当に10万ボルトの電圧を発生させているのか疑わしい。

10万ボルトはかなり古い時代から慣例的に10万ボルトと呼ばれており、実際にピカチュウが発生させている電圧を測定した研究が存在しない。

そもそも、ピカチュウの電気は雷のように空気中を伝わって人に到達するが、空気の絶縁破壊には300万[V]の電圧を発生させる必要がある。(出典:Wikipedia「絶縁破壊」

10万ボルトでは足りないので、10万ボルト以上の電圧を発生させている可能性もある。

また、電流が流れやすいように相手までの空気中に何らかの物質を散布してから電圧を発生させている可能性もあり、ピカチュウが発生させる電圧についてはより一層の調査が必要である。

 

3.3 実用可能性

のみさんらの研究では、パソコンから常にピカチュウを出し入れする作業が必要であったり、ヒメリの実を大量に栽培するための広大な土地が必要であったりした。

これらのことから、ピカチュウで家庭の電力を賄うピカ発電は、実用化が難しいと考えられていた。

 

4 分析

4.1 電流の算出

3.1節で述べたように、先行研究では電流の大きさを先に仮定していたが、このアプローチは誤りである。

したがって、本稿では以下の仮定に基づいて、電流を算出する。

仮定1

ピカチュウが発生させる電圧:10万[V]

上記の電圧をかけられた際の、サトシの身体の電気抵抗:500[Ω]

電圧が10万[V]かどうかについては上述の通り一考の余地があるが、本稿ではひとまずそのまま採用するものとする

 

したがって、オームの法則より

10万[V] = サトシの身体を流れる電流[A] × 500[Ω]

となり、この式を解いて、

サトシの身体を流れる電流=200A

となる。

これは一般的な致死量の電流の2000倍であるが、サトシはこの電流に耐えられることができると考えられる。

 

4.2 サグキ仮説

前節の議論はちょっとナンセンスではないかと思われる方も多いだろうが、先行研究の「電気抵抗が常人の2000倍」という仮定を置くよりも真っ当な仮定である。

「電気抵抗が常人の2000倍」ということは、身体の組成が全く違うということであり、サトシの身体が緑だったり赤だったりする可能性すらある。

漫画「鋼の錬金術師」に、身体の組成を自由に変えられるキャラクターが登場したが、サトシがこのキャラクターと同体質だったという仮定はあまりに無理がある。

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(グリード)

 

それよりも、「電流を浴び続けた結果耐性がついた」と考える方が自然だ。

こちらも「HUNTER×HUNTER」という漫画にそういうキャラクターが出てきた。

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(キルア)

 

サトシは、グリードよりも、キルアに近い

 

この仮説を、それぞれの頭文字を取って「サグキ仮説」と呼ぶことにする。

 

4.3 電力の算出

前節の「サグキ仮説」より、4.1節で計算した電流の値が正しいと考えられる。

4.1節で計算した値を用いて、電力を計算すると

電力[W] = 電流[A] × 電圧[V]

であるので、

ピカチュウが生み出す電力[W] = 200[A] × 10万[V]  = 2000万[W]

となる。

2000万ワット、すなわち2万kWである。膨大な電力だ。

 

夏場の二人世帯での消費電力量は、およそ17.4kW時である。(出典:電力計画.com)

計算しやすくするために、17.4kW時の単位をkW秒に変換する。

17.4[kW時] × 3600 = 62640 [kW秒]

 

よって、夏場の二人世帯の一日分の電力量を賄うには、62640kW秒を賄えば良い。

 

さて、前述の通り、ピカチュウが生み出す電力(単位時間あたりの電力量)は、20000kWであるので、ピカチュウが一日あたり発電するべき時間は

 

62640[kW秒] ÷ 20000[kW] = 3.132[秒]

 

となる。一日あたり3秒と少し発電していれば良い。

のみさんらの先行研究では10万ボルト一回を10秒として考えている。

アニメをベースで考えると、10秒は少し長いにしても、一回の10万ボルトで3秒以上は確実に放電している。

したがって、家庭の電力を賄うために、ピカチュウは「一匹」が「一日に一回」、「10万ボルト」を放てばそれで良いと言える。

ただし、損失なく十分に電気を蓄えることができる蓄電池が必要である

 

4.4 実用可能性

従来研究では実用化が困難とされてきたピカ発電であるが、妥当性を欠いていた部分を修正して計算し直せば、上記の様に「家庭に一匹」のピカチュウで十分家庭の電力を賄うことが可能である。

ピカ発電の実用可能性を示したと言えよう。

 

5 結論

ピカ発電について、先行研究の問題点を修正して分析し直した。

新しい結果が生まれるとともに、ピカ発電の実用可能性が示された。

 

6 今後の課題

6.1 ピカチュウの電圧測定

本稿では、3章で述べた先行研究の問題点についての解決策を示した。

3.1節の「電流の仮定」と3.3節の「実用可能性」については十分な回答を示したが、3.2節「電圧の仮定」については、今回は扱えなかった。

10万ボルトが本当に10万[V]の電圧を発生させているのか、早急に確認する必要があるだろう。

ピカチュウの電圧を正確に測定した上で、本稿で示した実用可能性が妥当であるかどうかを、再検証しなければならない。

 

6.2 蓄電池

本稿の分析により、ピカチュウは2万kWという凄まじい電力を発電することが判明した。

しかし、この電力(そして、10万ボルトという凄まじい高圧)を損失少なく蓄えられる蓄電池で、お手軽に入手できるものは流通していない。

したがって、今回示された実用性についても、良い蓄電池が開発されない限り絵に描いた餅である。

安価で、高圧電流にも耐える良い蓄電池の開発も、急がれていると言えるだろう。

 

 

 

author
Ken Horimoto
堀元 見

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